2018年12月15日(土)
主張
辺野古土砂投入
法治国家ではあり得ぬ大暴挙
安倍晋三政権は、沖縄の米軍普天間基地(宜野湾市)に代わる新基地建設で、名護市辺野古沿岸部への土砂投入を強行しました。沖縄県の玉城デニー知事が菅義偉官房長官らに工事の中止と真摯(しんし)な協議を強く申し入れたのを無視しての言語道断の暴挙です。9月の沖縄県知事選で示された新基地反対の圧倒的な民意を冷酷に切り捨てるだけでなく、法治国家では到底あり得ない違法に違法を重ねた蛮行です。絶対に容認できません。
埋め立ての法的根拠ない
新基地建設をめぐっては沖縄県が8月、急逝した翁長雄志前知事の遺志を継ぎ辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回し、工事は法的根拠を失って止まっていました。
工事事業者の防衛省沖縄防衛局は対抗措置として、行政不服審査法を悪用し、県の承認撤回に対する審査請求とその裁決までの執行停止の申し立てを石井啓一国土交通相に行いました。石井国交相による執行停止決定を受け、沖縄防衛局は11月から工事の再開を強行し、今回の土砂投入という暴挙に至りました。
しかし、行政不服審査法は国民の救済を目的にした法律です。私人にはなり得ない立場にある国の機関には適用されないことも明記しています。沖縄防衛局の申し立てや石井国交相の決定が違法・無効なのは明白です。法的根拠を失ったままの違法工事が許されるはずがありません。
しかも、工事は、2013年に当時の仲井真弘多知事が埋め立てを承認する条件にした「留意事項」にすら違反しています。
「留意事項」は、埋め立て工事の実施設計やそれに基づく環境保全対策などを県と協議することを定めています。ところが、沖縄防衛局は工事全体の実施設計さえ示していません。
「留意事項」はまた、埋め立て土砂の採取に関する計画などを変更して実施する場合は知事の承認を受けるとしています。
沖縄防衛局は、計画で土砂の搬出場所としていた本部(もとぶ)港(本部町)ではなく、名護市の桟橋を使用しました。さらに計画で「本部地区」としていた採取場所について、今回はどこだったか明らかにしていません。搬出土砂の有害物質の検査結果も明らかにしていません。当然、知事も了承していません。
デニー知事は今回の土砂投入について「もう後戻りできないという状況になるとは決して思っていない」と強調しています。
埋め立て予定海域には軟弱地盤が存在し、新基地が完成する見通しは立っていません。地盤改良工事をするにしても、それによる環境破壊は甚大です。しかも、県の試算では、新基地完成までに最低13年、建設費は最大2兆5500億円もかかります。建設強行の口実にしている「一日も早い普天間基地の返還」には程遠いにもかかわらず、安倍政権は県の指摘に反論不能に陥っています。
「県民の怒り燃え上がる」
沖縄の民意や日本の法律よりも米国との約束を上に置く、主権放棄の政治に道理はありません。デニー知事は「県民の怒りはますます燃え上がる」と述べています。来年2月24日には辺野古埋め立ての是非を問う沖縄県民投票が行われます。沖縄と全国が連帯を強め、新基地反対の世論と運動を一層大きくすることが必要です。