2018年12月30日(日)
カジノ誘致
きしむ自治体、住民反対広がり
安倍晋三政権が今年7月に強行成立させたカジノ実施法のもと、政府はカジノ誘致の主体となる地方自治体への働き掛けを強めています。しかし、長くカジノ誘致をめざしてきた地方でも、住民の強いカジノ反対の世論を前に大きな軋(きし)みが広がっています。
(竹腰将弘)
政府は督励するが…
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カジノ実施法は今後数年中に、全国に3カ所を上限としてIR(カジノを中核とする統合型リゾート)を開設するとしています。そのさい、47都道府県と20政令市のいずれかが主体となって、国にカジノ誘致を申請、認可を受けるという仕組みです。
申請3自治体だけ
政府のカジノ推進本部(特定複合観光施設区域整備推進本部、本部長・安倍首相)は19日から、全国九つのブロックで実務者向けの説明会を連続開催しています。
大阪市内で開いた説明会(20日)で同本部の中川真・事務局次長は「来年7月にはカジノ管理委員会を設立し、夏には国土交通大臣が基本計画を発表する」と明言。自治体やカジノ事業者に準備の加速化を督励しました。
同本部は11月初旬までに、申請主体となるすべての自治体を対象にカジノ誘致についての意向調査を実施しました。明確に誘致申請すると表明したのは大阪府・市、和歌山県、長崎県の3者のみです。
政府以上に先走り
松井一郎府知事と吉村洋文大阪市長の維新コンビがタッグを組んでカジノ誘致を進めている大阪府・市は申請すると回答。松井知事は来年早々からカジノ事業者の選定に入り、夏までには決定すると表明するなど、政府以上にカジノでの“先走り”を強めています。
2025年開催予定の万博招致決定で、これと一体のカジノ万博構想が勢いづいたかにみえますが、「大阪都」構想の「試金石」(橋下徹前大阪市長)と位置付けるカジノにたいする大阪府民の反発は根強いものです。カジノ反対の新たな市民団体が旗揚げするなど「カジノあかん」の声をあげる多彩な市民のネットワークが広がっています。
やはり申請を表明した長崎県のカジノ構想は、同県佐世保市の観光施設「ハウステンボス」(澤田秀雄社長)への立地を前提として進んできました。
澤田社長は3日、ハウステンボスで行った同社の決算に関する会見でカジノ誘致について「慎重にやらないといけない。何千億円もの投資が必要。リターンが取れるのか」と発言。県と佐世保市が一体に進めてきたカジノ構想は、足元から揺らいでいます。
「検討中」「未定」と回答した自治体に共通するのは、住民の強いカジノ反対の世論に直面し、表向きは誘致を明言しないという欺瞞(ぎまん)的な態度をとっていることです。
北海道では、高橋はるみ知事が「観光振興や地域経済活性化が期待される一方、ギャンブル依存症の影響も懸念される」などどっちつかずの発言を繰り返し、「道の立場は白紙」としながら、賛成派だけを集めて道庁内に設置した「有識者懇談会」を舞台に誘致に向けた実質的な準備が進められてきました。しかし、高橋知事が15日、4月の知事選への不出馬を表明したことで、既成事実を重ね、なし崩しにカジノ誘致に乗り出すという従来の路線が崩れました。
カジノ推進の情報機関「AGB(アジア・ゲーミング・ブリーフ)Nippon」は17日、「IR賛成派は道内の地位を失いつつある」という悲観的な見方をホームページで流しました。
カジノ推進本部が行った意向調査への主な自治体の回答
〔申請する〕大阪府・市、和歌山県、長崎県
〔検討中〕北海道、東京都、千葉市、横浜市、川崎市
〔未定〕名古屋市
〔申請しない〕沖縄県