2019年2月21日(木)
インターネット上の海賊版対策
対象拡大に懸念の声
漫画家からも「反対」
政府は、インターネット上の海賊版対策を強化するとして、著作権法を今国会で「改正」する方針です。この内容に対して、専門家や著作権者、一般のインターネット利用者の間で反対や懸念の声が上がっています。
著作権法は2012年の法改正で、映画と音楽については、海賊版など違法にネット上に載せられた(アップロード)ものと知りながらダウンロードをすると刑事罰が科されるようになりました。今回の改正は、違法の対象範囲を、静止画など著作物全般に拡大するものです。
研究者や作家、一般利用者が、研究や創作のためにネット上の記事や図版、文章などをダウンロードすることは日常的に行われています。これらは、違法にアップロードされたものかどうかの判断が難しいため、違法の対象範囲が拡大されることによって、マンガなどの2次創作文化にも影響を与え、逆に研究や創作の萎縮を招きかねないとの危惧が広がっています。
2012年の罰則化導入以降、違法ダウンロードで摘発された事案はなく、文化庁は「抑止力としての効果があった」と説明しています。しかし、研究者からは「今回改正しても、実効性がないだけでなく、海賊版対策に必要な範囲を超えて国民の自由を不当に制約しかねない」との批判が出ています。
2月8日には、「違法ダウンロード範囲拡大を考える院内集会」(NPО法人うぐいすリボン、コンテンツ文化研究会主催)が参議院で開かれました。この問題で反対声明を発表している「日本マンガ学会」会長で漫画家の竹宮惠子氏は、2次創作のためのダウンロードまで禁止すると、「マンガファンのコミュニティーを壊すことになる。2次創作から生まれるのがマンガ。そこへこそ配慮してほしい」と訴えました。
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の委員も集会に参加し、「文化庁は結論を急ぎすぎている。もっと時間をとって議論すべきだ」として、連名で文化庁に意見書を出したことを報告しました。日本共産党からは畑野君枝衆院議員が参加しました。
ネット利用者にも不安の声が広がり、19日には、研究者ら87人が「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する緊急声明を発表するなど、慎重な議論を求める声が広がっています。
(今井直子 学術・文化委員会事務局)