2019年3月24日(日)
主張
辺野古米軍新基地
新工区埋め立ては無法の極み
沖縄県の米軍普天間基地(宜野湾市)に代わる名護市辺野古の新基地建設計画で、安倍晋三政権は25日にも新たな埋め立て工区への土砂投入を強行しようとしています。県民投票で示された辺野古埋め立て反対の圧倒的民意を踏みつけにするもので、民主国家では決して許されない行為です。しかも、今回の土砂投入は、「普天間基地の一日も早い返還」のために新基地建設を急ぐという政府の口実さえ成り立たないものです。無法・無謀な土砂投入は中止すべきです。
完成には全く近づかない
新たな工区への土砂投入は、政府が1月に沖縄県に通知しました。しかし、辺野古埋め立ての賛否を問う2月の県民投票では反対票が7割を超えました。玉城デニー知事は今月19日に首相と会談し、県民投票の結果や1万人規模の県民大会の開催(16日)を伝え、新基地建設断念、新たな土砂投入の中止を訴えていました。
ところが、岩屋毅防衛相は22日、新たな土砂投入について「準備が整い次第始めさせてもらいたい。辺野古への移設がなければ普天間基地は固定化してしまう」と述べ、強行する姿勢を示しています。
政府は、県民投票を受けてデニー知事が1日に首相と会談した直後にも新たな護岸工事に着手しており、民意無視の強権姿勢はあまりに異常です。沖縄県が22日、県による辺野古埋め立て承認撤回の効力を停止した政府(国土交通相)の決定を違法だとして提訴に踏み切ったのは当然です。
今回の新たな土砂投入は、政府が狙っている新基地建設の早期完成にも一切関係ありません。
新基地建設の埋め立て区域は、辺野古の南側にある非常に浅い海域と、北側と東側に広がり、大深度の海域が存在する大浦湾にまたがっています。政府が昨年末から土砂投入を続けているのは南側海域の工区で、今回、新たな土砂投入を狙っているのも同じ南側海域のもう一つの工区です。
沖縄県が公表した意見書(15日)によると、当初の政府の工程表では、(1)埋め立て工事は大浦湾側から着手(2)南側海域はその後に着工(3)南側海域の埋め立ては大浦湾側よりはるかに早く完成(4)その後に大浦湾側の埋め立てが完了―という順序になっています。全体の埋め立て工事は、大浦湾側で始まり、大浦湾側で終わる計画です。
ところが、政府は大浦湾側の埋め立てにいまだ着工できないばかりか、そのための護岸の実施設計もできていません。大浦湾に軟弱地盤が存在するためで、南側海域でいくら土砂を投入しても「新基地完成には一日たりとも近づくものではない」(意見書)のです。
普天間基地の即時閉鎖を
それでも政府が土砂投入を強行しようとするのは、既成事実を重ね、県民の諦めを誘う卑劣な狙いからです。しかし、大浦湾側の埋め立てのためには軟弱地盤の改良工事が不可欠ですが、承認権を持つデニー知事の新基地阻止の立場は不動です。仮に改良工事が可能になったとしても、それに必要な膨大な砂の調達にめどが立っていないなど、多くの問題を抱えており、新基地の完成は「遠い将来のこと」であり、「事実上の普天間固定化」(同前)につながります。
辺野古の新基地建設計画の破綻は明らかです。普天間基地は即時閉鎖・撤去こそ必要です。