2019年3月28日(木)
春闘点描
建交労トラック部会 賃上げで安全輸送に
規制強化を生かして
全日本建設交運一般労働組合(建交労)のトラック労働者は、運転者の賃金引き上げや労働条件の改善が安全輸送の保障につながると訴え、春闘をたたかっています。(唐沢俊治)
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「大幅賃上げで輸送の安全を!」「適正運賃収受で経営改善を!」と横断幕などで装飾したトラック約40台が3月17日、東京都江戸川区のトラックターミナルから浜離宮庭園前まで走りました。建交労が各地で取り組むトラックパレードで、沿道の注目を集めました。
行き先分からず
トラック輸送は、経済の“動脈”の役割を担う重要な産業です。しかし、長時間過密労働と低賃金が常態化し、運転者の人員不足や高齢化は深刻です。
兵庫県姫路市のトラック会社の事業所で働く男性(51)=建交労兵庫トラック部会事務局長=は「行き先も明確に分からないこともあるので、1週間分の着替えを持って出社する」といいます。
最近のある1週間の働き方は―。2泊3日で、福岡市など九州地方へ配達と荷積みをして帰社。自宅に帰らず、さらに2泊3日で関東地方へ向かいました。「2泊」というものの、車中で仮眠をとる程度。自宅で過ごすのは週1回程度といいます。「残業」を月約150時間もこなして、年収は約520万円だといいます。
建交労の春闘トラック職場要求アンケート(途中集計)によると、時間外労働で月50時間以上が42・3%、平均年収は約404万円。長時間過密労働によってようやく人並みの生活ができる低賃金構造になっています。
過剰な規制緩和が進められた1990年以降、燃料代など経費は上がる一方で運賃は下がり、運転者の賃金も低下していきました。
荷主による運賃の買いたたきといった不公正な取引が背景にあり、輸送事故の増加とともに社会問題となり、政府も放置できなくなりました。
こうしたなか、トラック運送事業の健全な発展や、運転者の労働条件改善などを目的とした改正貨物自動車運送事業法が昨年12月、国会で全会一致で成立しました。規制緩和による弊害などの打開に向けた大きな一歩です。同改正法に基づき、国土交通相が「標準的な運賃」を示すことになっています。「適正な対価」の確保など具体的な対策はこれからです。
建交労と運送会社の経営者でつくる建交労中央運輸労使協議会はトラック運送業の課題解決のため、政府要請や、全日本トラック協会、石油連盟、日本産業・医療ガス協会など業界団体にも働きかけています。
建交労トラック部会は、春闘の賃金統一要求で月額4万5000円以上を示しました。要求を提出した職場の3割にあたる41職場の回答では、昨年より300円程度低い水準となっており、大幅引き上げに向けたたたかいは続きます。
魅力ある業界に
埼玉県上尾市の輸送会社の女性(49)は「乗り物が好き」と18歳からトラック輸送に携わっています。
「納品先で会話をしたり、荷物を通じていろんな人と出会いがあります。仕事自体はとても楽しい。でも長距離を走るのは大変。腰痛などを抱え、だましだまし仕事を続けています」。賃金引き上げや有給休暇の拡大が切実な要求です。
先の男性は「改正法の実効性確保や、業界秩序の確立が必要です。法律が順守されて、トラック運転者が元気に働け、魅力あるトラック業界にしないといけない。今は、そのチャンスだ」と話しています。