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2019年3月29日(金)

医師の残業、年1860時間

検討会が報告書 過労死ラインの倍

 医師の働き方改革に関する厚生労働省の検討会は28日、2024年度から適用する医師の残業時間規制に関し、地域医療を担う特定の医療機関や研修医らについて「年1860時間」(休日労働を含む)まで認める報告書を取りまとめました。

 この上限は月換算で155時間。「過労死ライン」(複数月平均80時間)の2倍近くになります。医師の抜本増員を棚上げにして異常な長時間労働を容認するもので、安倍内閣の姿勢が問われます。

 一般の勤務医の上限は一般労働者と同水準とし、「過労死ライン」と批判される「年960時間」とします。

 一方、地域医療の確保を理由に、特定の医療機関の勤務医や、集中的に経験を積む研修医や高度な技能を学ぶ医師は、「年1860時間」まで容認します。

 代わりに、連続勤務は28時間(初期研修医24時間)までに制限。次の勤務までに9時間の休息を取る「勤務間インターバル」を義務付けます。ただし、これらが実施できない場合は「代償休息」も認めており、「抜け穴」になりかねません。

 この上限特例について報告書では、「医師の健康確保や労働時間短縮から賛同できないとする意見があった」と記載されました。

 特定医療機関に対する特例は、「医師の偏在」解消のめどにあわせて35年度を終了目標とし、研修医らについては終了期限を設けず、制度の検証を進めていくとしています。

 報告書には、業務の一部を看護師などに移す「タスクシフト」や、地域医療切り捨ての危険がある提供体制の「集約化・重点化」も盛り込まれました。

 報告書を受けて労働政策審議会で省改定案が議論されます。

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安心・安全脅かす/抜本的増員こそ

 医師の働き方に関する厚生労働省の検討会報告書は、医師の抜本的増員に背を向けたまま、地域医療などを担う医師や研修医らに「過労死ライン」の倍の時間外労働を容認するもので、「改革」の名に値しないものです。

 国民が求める「安心・安全の医療」にかかわる重大問題です。

 こんな事態になったのは、医師不足を過重労働の原因と認めながら、「医療費抑制」政策から「医師は増やさない」との前提を同省が押し付けたからです。

 長時間労働を固定化する同省に対し、副座長が抗議し辞任する前代未聞の事態になったのも、その表れです。

 同省は、医師は2028年ごろに約35万人となって需要と供給が均衡し、その後は余ると推計しています。しかし、これは不正確な実態調査をもとに、過労死ラインの長時間労働などを前提にしたもので見直しが必要です。日本は、経済協力開発機構(OECD)平均より10万人以上少ないのが実態です。

 同省は、看護師に業務を移すことや、病院・病床の「集約化」を打ち出しています。しかし、人員不足の看護師に新たな業務を担わせたり、医療保障を危うくする集約化では解決にはなりません。

 多くの医師や労組、過労死遺族をはじめ、100万人を擁する日本医学会連合などが医師増員など抜本的改革を求めています。報告書でも「医師の健康確保と医療の質・安全の確保をともに進めていく」と明記。そうであれば医師の大幅増員や診療報酬改定など抜本的改革を行うべきです。(深山直人)


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