2019年4月10日(水)
主張
日米のFTA
「米国第一」危険な交渉やめよ
安倍晋三首相とアメリカのトランプ大統領が昨年9月の首脳会談で開始を合意した、日米貿易協議の初会合が15~16日、ワシントンで開かれる予定です。
安倍政権は「日米物品貿易協定(TAG)」交渉と呼んでごまかしますが、交渉対象は物品だけでなく、サービスや金融なども含んでおり、まぎれもない「自由貿易協定(FTA)」交渉そのものです。トランプ政権は、環太平洋連携協定(TPP)や日本と欧州の経済連携協定(EPA)以上の成果を目指すと公言し、農産物や自動車に照準を当てて、日本に譲歩を迫ろうとしています。
経済外交破綻の象徴
交渉開始を前にした3月、アメリカ通商代表部(USTR)は、今年の年次報告書と、「外国貿易障壁報告書」を発表しました。
トランプ政権で3回目になる年次報告書は、「主要な競争相手国は日本との自由貿易協定(FTA)を結び、米国の輸出産業に対する価格競争力を強めている」と指摘しました。農畜産物に対し、「関税削減・撤廃で米国産農産物の包括的な市場アクセス(参入)を確保する」と明記しています。
貿易障壁報告書は日本の項で、日米交渉に言及するとともに、前年とは記述の順序を変えて、かんきつ類・乳製品・加工食品・他の農産物の“高関税”を各論の冒頭に置きました。
3月の米大統領経済報告でも、「日本とは自由貿易協定(FTA)交渉に入る」と明言しました。
安倍政権は、2017年に大統領に就任したトランプ氏が一方的にTPP離脱を表明した後も、復帰させるとしてきました。しかし、実現できず、アメリカを除く11カ国によるTPP11の発足や日欧EPAの発効とともに、日米2国間での交渉を受け入れたのです。日米交渉は文字通り、安倍経済外交破綻の象徴です。
トランプ政権は昨年末公表した「対日貿易交渉目的」という文書で、農産物や自動車、金融、通貨など22項目の交渉事項を列記し、「TPPを下回らない水準」での成果をあげると主張しました。
もともとTPPは、国際競争力の強い国や多国籍企業に利益をもたらす、貿易や投資のルールづくりです。トランプ政権がTPPを離脱したのは、「アメリカ第一」の立場から、多国間ではなく2国間交渉で、いっそう自国に都合の良い内容を相手にのませるためです。TPPと同時に離脱した北米自由貿易協定(NAFTA)では、メキシコやカナダと交渉して、アメリカに有利になる新しい協定(USMCA)を結びました。
TPPを離脱したアメリカは、農畜産物などでカナダやオ―ストラリアに日本の市場を奪われることを恐れています。そのため日本に、「TPPを下回らない水準」の合意を押し付け、市場を確保する魂胆です。
“亡国”の道は許さない
TPP11や日欧EPAに加えて、日米交渉でアメリカ言いなりになれば、日本の農業や国内産業はいよいよ立ち行きません。すでにTPP11によって、牛肉などの輸入急増が問題になっています。
“亡国”の日米FTA交渉は、直ちに中止すべきです。
日本の経済・食料主権を尊重する、公平・公正な貿易ルールを確立することがますます重要です。