2019年4月10日(水)
日立 ルール無視の異常
無期転換申し込んだら解雇
経団連会長企業の日立製作所が、労働契約法の無期雇用転換を申し込んだ女性を解雇しようとしていた問題は、解雇手続きがずさんで不備があることが判明しました。電機・情報ユニオンは、「無期転換が成立している。女性を職場に戻せ」と訴えています。(田代正則)
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手続きの不備も判明
日立の無期転換逃れは本紙3月19日付で報じた後、多くのメディアが取り上げ、社会問題になりました。
無期転換とは2013年に施行された、有期雇用労働者が雇用を5年継続すると無期雇用への転換を申し込める労契法のルールです。これまで、5年を迎える前に、雇い止めにする事例はありましたが、5年が経過し、労働者の無期転換申し込み後に、解雇にする事例が発覚したのは初めてです。こんな解雇が許されれば、無期転換ルールが形骸化する重大問題です。
この女性は、日立横浜研究所(横浜市戸塚区)に勤務。2003年に派遣労働者として日立で働きはじめ、12年10月に直接雇用の契約社員となり、通算16年も働いています。研究所は、鉄道や電力、都市機能など社会インフラを制御する大規模システムの研究をしており、女性は、研究と事業部の連絡窓口を務めていました。
昨年4月の契約更新で5年を超え、6月に無期転換を申し込みました。
後日、会社が用意した無期転換の申請書には、転勤受け入れなどの条件もありましたが、女性は11月、受け入れを表明して、改めて申請書を出しました。
これに対し、今年2月、会社は横浜研究所の事業の一部を中央研究所(東京都国分寺市)に移すことを口実に、3月末での解雇を予告しました。女性は、「正社員は解雇になっていない。私は転勤も受け入れているのに、解雇になるのはおかしい」と訴え、電機・情報ユニオンに加入して解雇撤回を求めました。
会社は、解雇予告をしただけで肝心の「解雇通知」を出すという重要な手続きを怠りました。4月1日、電機・情報ユニオンの申し入れに対し、「解雇通知」を出していないと認めました。
2012年8月10日付の労働基準局長通達は、無期転換を申し込んだ時点で、すでに有期契約の満了翌日からの無期契約が成立していると指摘しています。「解雇通知」をしなければ、自動的に無期転換されます。
会社は、30日前までに解雇予告をしただけで、解雇は成立したと言い張っています。女性は、2度も無期転換を申請しているのに、不誠実な態度です。
通達は「解雇については当然に労働基準法第20条の解雇予告等の規定の適用があるもの」と記述し、労基法の「解雇予告」と労契法の「解雇」を手続きで明確に分けています。日立の主張は成り立ちません。
日本共産党の畑野君枝衆院議員は2月27日の予算委員会で日立の解雇問題を追及。田中誠二厚労省審議官は、経営上の理由に基づく解雇の場合、「整理解雇の4要件」((1)人員整理の必要性(2)解雇回避努力義務の履行(3)被解雇者選定の合理性(4)手続きの妥当性)で判断されると指摘しました。世耕弘成経産相は、「法令順守は、経団連会長企業かにかかわらず大前提だ」と述べ、違法が認められれば「経産省としてもしっかりと対応したい」と答えています。
電機・情報ユニオンは、団体交渉などで解雇不成立を確認し、女性の職場復帰を求めていくとしています。
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