2019年4月20日(土)
ソニー売却会社の事業継続
労組 3年がかりで運動
成果伝える門前宣伝に反響
ソニーの事業売却で発足した電子部品メーカー「デクセリアルズ」が、ソニー仙台テクノロジーセンター(仙台TEC、宮城県多賀城市)内の事業拠点で3月末の撤退を断念し、4月も事業を継続していることが分かりました。ソニー労働組合仙台支部(電機連合加盟)が3年がかりで運動してきた成果です。(田代正則)
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ソニー労組は3月29日朝、仙台TECの門前で出勤する労働者に、デクセリアルズの事業継続を知らせるビラを配布しました。存続を求める春闘要求に同社が4月11日に回答すると約束し、3月末での撤退がないことが確定したためです。労働者も次々とビラを受け取っていきます。
デクセリアルズは、2012年にソニーの化学部材製造事業が日本政策投資銀行などが出資する持ち株会社に売却されて発足しました。ソニーの従業員約130人が本人同意もなく転籍させられ、仙台TEC敷地内でそのまま働いていました。
同社は、ソニー時代からの高い技術で、太陽からの熱線を上方へ反射させ温度上昇を抑える窓用フィルムを発表するなど話題になりました。仙台TECでも試作品製造などが行われました。
「分室」に格下げ
16年4月、従業員に対し栃木県へ事業集約して「19年3月までに撤退」と説明し、遠隔地配転か退職か、どちらかの選択を迫る「転勤可否申告書」を配布しました。従業員は30人まで減り、事業所の名称も「分室」へと格下げになりました。
ソニー労組仙台支部は転籍対象となった労働者の組合加入を受け、リストラ撤回を同社に要求してきました。
宮城県議会では日本共産党の天下みゆき県議が16年9月、「県として雇用と地域経済を守るために、多賀城事業所の継続をデクセリアルズに働きかけていただきたい」と質問。村井嘉浩県知事は「ソニー労組仙台支部等からの要望書を受け、同社へ引き続き現状での事業継続を要望した」と答えました。
会社は撤退とは言えなくなり、組合との団体交渉で「多賀城は30人を残し、その後のことは検討中」と繰り返しました。今年1月、デクセリアルズの社長が仙台TEC内の事業所を訪問し、同所で事業展開が決定したと発言しました。
こうしたなか春闘で、組合が雇用確保などを要求すると、会社は、4月11日を回答日に指定し、4月を超えても撤退しないことが確定しました。
従業員数回復へ
栃木に遠隔地配転された労働者にとっても、仙台TECでの事業継続は希望でした。仙台TECで一時は30人まで減った従業員は、現在、60人程度まで回復しています。自分たちも戻って再興を担いたい、退職せざるを得なかった人たちも希望があれば再雇用してほしいという声が出ています。
一方、仙台TEC内のソニーの磁気テープ製造部門では昨年冬、約200人いた派遣労働者の契約打ち切りが相次ぎました。ソニー労組の反対で、半数程度が職場にまだ残っているところでストップしています。ソニー労組は、ソニーが2年連続過去最高益で内部留保は3兆9351億円にのぼるとして、賃上げと雇用確保で社会的責任を果たすよう求めています。