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2019年4月30日(火)

主張

「殺人ロボット」

規制・禁止へ国際的合意つくれ

 人工知能(AI)を利用した自律型致死兵器システム(殺人ロボット)の研究・開発が進み、近い将来、実戦利用される危険が高まっています。殺人ロボットをめぐっては“戦争の敷居を下げる可能性がある”などさまざまな問題点が指摘されています。国連の議論では法的拘束力のある禁止条約を求める声が出ています。各国政府だけでなく、企業、研究者、NGOなども交えて、規制・禁止に向けた国際的な合意をつくることが必要です。

AIに人命ゆだねるのか

 自律型致死兵器システムは、人間の関与なしにAIが自ら標的を選択し、攻撃する兵器です。対象の認識、選択、攻撃、交戦の過程で、人間はまったく関わりません。戦争のあり方を根本的に変え、火薬、核兵器に続く「第3の軍事革命」になるといわれています。

 国際NGOの調査によると、米国、英国、ロシア、中国など少なくとも12カ国が殺人ロボットを開発中です。これらの国は、推進する理由として、AIの活用によって人間よりもいっそう正確、迅速、冷静に標的の選択や攻撃を行えるとしています。戦地へ兵士が直接展開しないため死傷者を減らせるとも主張しています。

 しかし殺人ロボットの使用は、国際人道法や倫理に照らして重大な問題を抱えています。民間人の殺害、病院や学校の破壊など国際法に違反する行為があった場合、だれが法的な責任を負うのか、その基準すら不明確です。誤作動や判断ミス、暴発もありうるAIに人間の生命を奪う行為をゆだねること自体への批判は尽きません。「生身の人間の死傷が減る」という主張についても、それが逆に戦争の安易な開始を助長したり、新たな軍拡競争を招いたりする、と厳しく反論されています。問題点を置き去りにして開発だけが先行しているのは深刻です。

 国連では2014年から特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みで議論が続いています。今年3月に開かれた会合では全面的な禁止条約の交渉・制定を求める声の広がりが目立ちました。

 グテレス国連事務総長は会合の開幕に寄せたメッセージで、殺人ロボットは「国際法によって禁止されるべきだ」と強調しました。アフリカや中南米諸国、非同盟諸国を中心に、約30カ国が法的拘束力のある禁止を求めています。

 この流れに抵抗しているのが米ロなど開発を進める国々です。未完成の兵器を制限するのは“時期尚早”という主張ですが、こうした意見は少数派にとどまっています。会合に参加したNGOによると、出席した90カ国の大半は何らかの規制や禁止を求めました。

 欧州議会は昨年9月、欧州連合(EU)が殺人ロボットに反対し、開発・製造を国際的に禁止するよう求める決議を採択しました。昨年12月に世界26カ国で民間会社が行った世論調査では、61%が殺人ロボットに反対しています。

危険を直視した議論こそ

 日本の河野太郎外相は3月、「まったく人間が関与しない兵器の開発には反対」とする一方で、人口減少が進む中で安全保障を考えると「効果的かつ効率的な手段足り得る」とも述べました。殺人ロボットの危険を本当に直視しているのか。日本政府の姿勢と役割が問われています。


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