2019年5月18日(土)
主張
NPT再検討会議
核固執勢力を包囲する世論を
来年(2020年)の核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けて、ニューヨークの国連本部で開かれていた第3回準備委員会(4月29日~5月10日)が終了しました。来年の会議の議論のたたき台となる勧告は、核保有国などが強く反対したため、全会一致での採択はできませんでした。今回の準備委員会を通じて明らかになったのは、核兵器に固執する勢力と核兵器廃絶をめざす勢力の対決が新たな局面を迎えていることです。
保有国の逆行が浮き彫り
NPTは発効から来年で50年です。米英仏ロ中の5大国に核兵器の保有を認める一方、その他の国の核兵器取得を禁止する不平等な条約です。しかし、この条約が成り立っているのは、第6条で核兵器廃絶を交渉する義務を締約国に課しているからです。
ところがアメリカをはじめ核大国は、核兵器使用の姿勢を強め、新たな核開発に乗り出すなど、義務に逆行しています。トランプ米政権の中距離核戦力全廃条約(INF)脱退などで、核軍拡競争の懸念も高まっています。しかも核保有国は、NPT再検討会議で合意した「核兵器の完全廃絶」の「明確な約束」(00年)やそのための「枠組みをつくる特別の努力」(10年)をほごにしようとしています。アメリカは核軍縮の前に「環境づくり」が必要として、核兵器廃絶のさらなる先送りを企てています。
それだけに今回の準備委員会で非核保有国は、NPT体制が弱体化する危機感を募らせ、「第6条の義務を履行せよ」と正面から迫る議論を展開しました。
今回、勧告は採択されなかったものの、勧告の最終案は、核保有国との妥協をめざすよりも、非核保有国の意見を取り入れたことで、充実したものとなりました。核兵器廃絶の「明確な約束」を直ちに実行すること、核兵器を禁止する法の必要性と、核兵器禁止条約への多数の支持、核兵器使用の非人道性の叙述などが追加・拡充されました。核保有国は強く反発しましたが、圧倒的多数の非核保有国はこれを歓迎し、勢いづきました。核兵器廃絶の圧倒的流れとそれに抵抗する一握りの固執勢力という構図を浮き彫りにしています。
核兵器禁止条約の批准国が着実に増え、近い将来の発効が見通せるもとで、核保有国は大きな圧力を感じています。準備委員会では多くの国々が禁止条約を評価する発言をしましたが、保有国の反論はこれまでと比べても弱々しく、守勢に回っているのは明瞭です。
安倍晋三政権は禁止条約にかたくなに反対し、アメリカの核使用も否定しません。核保有国寄りの姿勢が目に余ります。被爆国日本で、禁止条約に参加する政府をつくることは、「核兵器のない世界」への大きな力となることは明らかです。参院選はその実現への重要な選択の機会です。
共同の力さらに発展させ
来年のNPT再検討会議の成否は予断を許しません。今後の帰趨(きすう)は、世論と運動、市民社会と諸国政府の共同の発展にかかっています。被爆75年でもある来年、原水爆禁止世界大会の精神を受け継いだ国際行動をニューヨークで行うことが、アメリカの運動団体などから提起されています。ヒバクシャ国際署名をさらに広げ、核兵器廃絶への扉を開く世論と運動を飛躍させることが求められます。