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2019年5月19日(日)

主張

日本の温暖化対策

政府案の抜本的な見直し必要

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、京都市で開催した総会(8~12日)で、温室効果ガスの排出量を算定する新しい指針を採択しました。2020年から始まる地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の目標達成に向け、各国の排出量をより正確に算定するために最新の科学的知見を反映させた改良版です。各国が脱炭素社会への努力を強めることが求められています。

後ろ向きの安倍政権

 IPCCは、温暖化の影響などを科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的に評価することを目的に、世界気象機関と国連環境計画が1988年に設立しました。195カ国・地域の科学者や政府関係者らが参加しています。

 IPCCは温室効果ガス排出量を正しく算定できるよう、指針の改定・更新を重ねてきました。今回決めた指針では、水素やレアアース(希土類)金属の製造にともなう温室効果ガスの排出量の算定などが加えられました。各国の排出量報告の透明性を高め、パリ協定実現につなげることが重要です。

 IPCCがまとめる報告書も、科学的根拠を与える重みのある文書として、国際交渉などに強い影響力をもちます。昨年公表した「1・5度特別報告書」は、世界の平均気温の上昇が産業革命前に比べ2度上昇した場合、異常気象や海面上昇などによる被害リスクが、1・5度上昇の場合よりもはるかに高まることを警告しました。

 報告書が、気温上昇を2度より十分低くして、1・5度に抑える努力をするパリ協定の実現が焦眉の課題であることを明らかにしたことで、昨年末の気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)の議論と合意を強く後押ししました。

 あらためて問われているのが、日本の立場です。6月に大阪で開かれるG20(20カ国・地域首脳会議)の議長国として温暖化対策で世界をリードする役割を果たせという声が広がっているにもかかわらず、安倍晋三政権の後ろ向きな姿勢は変わりません。

 国連に日本政府が提出する「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」案を公表しましたが、30年までの排出量削減の目標を引き上げようとせず、主要国では最低レベルのままです。

 「長期戦略」案づくりの過程では、ある大企業代表からも、パリ協定にふさわしい「脱炭素」のゴールを明確にすべきだとの意見も出ましたが、石炭火力にこだわる経団連や製鉄業界代表が異を唱え、結局、目標も期限も明示できませんでした。

 原発を推進し、CO2排出が格段に多い石炭火力発電を温存している内容に強い批判が上がっています。

世界で「脱石炭」が加速

 世界では多くの国が脱石炭火力発電に踏み出しています。英国とカナダの提唱によって17年に発足した「脱石炭連盟」は現在、欧州諸国やメキシコなど30カ国、ニューヨーク州など22自治体、大手民間企業など28社が加盟、多くの国が25~30年に石炭火力発電ゼロを掲げています。再生可能エネルギーの普及も加速し続けています。

 安倍政権はG20までに長期戦略を正式に決定する予定ですが、抜本的に見直すべきです。脱炭素の流れを促進するための責任を果たすことが急がれます。


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