2019年5月22日(水)
主張
「改憲」の争点化
首相の異常な執念打ち破ろう
安倍晋三首相(自民党総裁)が、同党の下村博文改憲推進本部長に対して、夏の参院選では「きちんと改憲を訴えていこう」と指示し、争点化する動きを強めています。安倍首相が執念を燃やす改憲が、国民の批判で進まないことから、選挙で「正面突破」する企てです。
改憲や消費税増税を争点に、衆院の解散・総選挙に踏み切るという、自民党内の動きを伝えるマスメディアもあります。首相と自民党の、改憲の野望を許すわけにはいきません。参院選で厳しい審判を下し、安倍政権を、改憲策動とともに葬り去ることが重要です。
歯止めない軍事大国に
安倍首相は今年の憲法記念日の改憲派の集会に寄せたビデオメッセージでも、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」という気持ちは「今も変わりはない」と断言しています。安倍氏が下村氏に、参院選で「改憲を訴えていこう」と指示した(17日)のも、改憲への執念深さを示すものです。
自民党は改憲に向けて、衆院の小選挙区支部ごとに改憲推進本部を設け、改憲を宣伝する資料やビラを大量に発行し、改憲世論の喚起に躍起です。
安倍首相は2年前の憲法記念日に、憲法9条に自衛隊を書き込むなどの明文改憲案を明らかにし、自民党は昨年、それをもとに改憲条文案をまとめました。これが実行されれば、憲法9条2項の戦力不保持・交戦権否認の規定が空文化・死文化し、自衛隊が大手を振って、海外での戦争に参加することが可能になります。文字通り、自衛隊員が外国で、“殺し・殺される”事態になりかねません。
自民党の改憲条文案が、自衛隊を憲法に書き込んだ上で、その「行動」は「法律で定める」としているのは重大です。これまで政府は、憲法との関係で、武力行使を目的にした海外派兵や集団的自衛権の行使、相手国を壊滅するための武器の保有や徴兵制は、「できない」としてきました。自民党案の通りになれば、法律さえ通せば、自衛隊の行動は際限なく広げることができます。まさに歯止めのない軍事大国の道です。
自民党が「改憲4項目」として、9条への自衛隊明記のほかに、「緊急事態条項」の創設や参院選の「合区」解消、教育の「無償化」を持ち出しています。「緊急事態条項」は、国民の権利を侵害するものです。これらはいずれも、改憲の「一丁目一番地」として首相が固執する、9条改憲の“呼び水”にするのが狙いです。
今年の憲法記念日に「朝日」が報じた憲法問題の世論調査では、憲法を変える機運が「高まっていない」が72%で、9条を「変えない方がよい」が64%と、国民は改憲を望んでいません。国民が求めてもいないのに改憲を強行するのは、最悪の立憲主義破壊です。
「安倍改憲にサヨナラ」
もともと、憲法を尊重・擁護する義務がある首相が、改憲の“旗振り”をすること自体、憲法違反です。憲法を破壊する首相に、憲法を語る資格はありません。
全国から憲法を守り生かす運動とともに、市民と野党の共闘を広げ、首相の野望を打ち砕くときです。安倍首相と自民党が参院選で改憲を「訴える」というなら、「安倍改憲は許さない」で力を合わせ、「安倍改憲サヨナラ」の審判を下そうではありませんか。