2019年5月23日(木)
リニア汚染土 海洋処分計画
JR東海が岐阜県に報告 法の“抜け穴”利用
JR東海がすすめるリニア中央新幹線の日吉トンネル工事(岐阜県瑞浪市)の際に、ヒ素など有毒物を含む汚染土が発生した問題で、同社が汚染土の一部を海洋埋め立てで処分する計画を岐阜県に報告していたことが22日、分かりました。汚染土は本来、産業廃棄物として処分するのが原則ですが、JR東海は法の“抜け穴”を利用する形で海洋埋め立てを計画。環境問題に詳しい専門家は「ヒ素が溶け出し海の汚染につながる恐れがある」と警告しています。(「リニア」取材班)
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海洋埋め立ての計画は、本紙が情報公開で岐阜県から得た県とJR東海の協議記録で判明したもの。
日吉トンネル工事では、土壌汚染対策法(土対法)の基準を超えるヒ素やフッ素を含む汚染土がこれまでに約60回発生しています。(4月2日付既報)
最終処分地に
協議記録によると、JR東海は汚染土の最終処分地を確保できておらず、複数の案を県に提示していました。その一つとして、JR東海は2017年10月5日の協議で汚染土の処分先として「海洋埋立処分地への搬出を検討している」と説明しました。
18年3月14日には、県埋め立て規制条例に基づく協議書の補足資料として、JR東海が県知事あてに「中央新幹線建設に関わる発生土運搬先について」を提出。このなかで、面積約11・5ヘクタールの「公有水面埋立工事」に汚染土を使用するとしています。
土対法の基準を超える汚染土は、産廃処分場での処分や浄化処理が必要です。他方、海洋の埋め立てを規制する海洋汚染防止法(海防法)の基準は、土対法より緩くなっています。ヒ素でみると海防法の基準は土対法の10倍です。JR東海が県に示した計画は、土対法の基準は超えるものの海防法の基準を超えない汚染土を海洋に埋め立てるというもの。法の“抜け穴”を利用する手法といえます。
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県外への搬出
埋め立て場所について県は、JR東海の「正当な利益が損なわれる」ことを理由に非開示としています。岐阜県は海に面していないため、海洋での埋め立て処分をするには、県外への搬出となります。
ゼネコン元幹部は「汚染土は産廃処分場や浄化施設で処理する。海に埋め立てるとは聞いたことがない。受け入れる自治体があるのか」と驚きます。
岐阜県の近辺では、名古屋市が港湾区域である大江川の埋め立てにリニアの建設残土を使いたいとしてJR東海と調整中です。ただ名古屋市河川工務課は「土壌汚染対策法の基準をこえた汚染土を受け入れる予定はない」としています。
本紙の取材に岐阜県の担当者は「(補足資料の提出後)海洋埋め立て処分が進んでいるかどうかは承知していない」と回答。JR東海は「(汚染土を)どこに埋め立てているかなど詳細については回答できない」としています。
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