2019年5月28日(火)
主張
日米首脳会談
米国言いなり交渉の危険鮮明
東京で行われた安倍晋三首相とトランプ米大統領との会談で、焦点の一つとなった両国の貿易問題について、今後の閣僚級協議を踏まえ、交渉を「加速」することで合意しました。大統領は、7月の参院選の後、「8月に大きな発表ができると思う」と述べています。
今回の交渉は、安倍政権が日米物品貿易協定(TAG)交渉と呼ぶ一方、米側が自由貿易協定(FTA)交渉と明言し、農産物などの対日輸出拡大を目指す、「アメリカ第一」の交渉です。アメリカ言いなりで交渉を続ければ、日本が大きな負担を背負わされるのは明白です。
8月には「大きな発表」を
もともと日米の貿易交渉は、トランプ氏が2017年に大統領に就任した後、アメリカ、日本など12カ国で合意していた環太平洋連携協定(TPP)から一方的に離脱したことが発端です。「復帰を求める」としていた安倍政権の方針が破たんし、アメリカを除く11カ国とのTPP11の発足や日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の発効と合わせ、2国間交渉を受け入れたものです。茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表による交渉の対象は、農産物や自動車など物品だけでなく、サービスも幅広く取り上げられることになっており、為替問題についても、麻生太郎財務相とミニューシン米財務長官の間で交渉が始まっています。
TPPは、経済大国や多国籍企業に有利な貿易や投資のルールづくりです。アメリカは離脱した結果、牛・豚肉や乳製品などの対日輸出で、オーストラリアやカナダ、EUなどに比べ、不利な立場に立たされています。実際、オーストラリアやニュージーランド、EUからの農産物の輸入は急増しています。来年11月の米大統領選を前に、米国内では不満がくすぶっており、トランプ政権は「成果」を出すことを迫られています。
4月に行われた日米首脳会談では、トランプ氏が農産物関税の「撤廃」とまで言って、日本の譲歩を迫りました。今回の首脳会談でトランプ氏は、8月には「大きな発表」ができると明言し、交渉の「加速」と、日本の譲歩を迫りました。7月の参院選までは待つが、その後要求をのめというわけです。参院選を前に譲歩し、批判を浴びたくない安倍首相の足元を見て、結論を引き延ばす形をとりながら、一段と圧力を強めたものです。
トランプ氏は貿易交渉について、「全ての貿易障壁を取り除きたい」「(2国間交渉では)TPPの水準に縛られない」と言いました。トランプ政権が言う通り、牛肉などの農産物の関税の大幅引き下げか撤廃がされれば、日本の農畜産業は破綻します。トランプ氏は「日米の貿易不均衡を是正したい」と言って、米国製兵器は「世界一」だと日本がさらに買うことまで迫りました。アメリカ言いなりの交渉継続の危険性を浮き彫りにしたものです。
“亡国の道”を進むな
交渉をこのまま続け、参院選で国民をだまし続け、参院選後に一気に、トランプ政権に大幅譲歩するなどというのは許されません。それこそ、“亡国の道”です。
日米2国間の交渉を直ちに打ち切り、日本の経済・食料主権を守る、公平・公正な貿易ルールづくりをこそ、目指すべきです。