2019年6月9日(日)
主張
プラごみ対策方針
抜本的解決の道筋がみえない
安倍晋三政権が先月末、プラスチック資源循環戦略、海洋プラごみ対策の行動計画、海洋漂着ごみ対策の新方針を決定しました。プラごみが世界各地で深刻な環境汚染を引き起こしていることが大きな問題になる中、今月末に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国・日本として、プラごみ対策で「リーダーシップをとる」ことを意識したものです。しかし、これらの対策の内容は、危機的ともいわれる海洋プラごみ汚染を抜本的に解決するには、あまりに不十分です。
日本は第2位の排出国
日本は、国民1人当たりのプラスチックごみの排出量が、米国に次いで世界第2位です。陸から海に流れ込んだプラごみによる汚染に歯止めをかけるために、日本は積極的な役割を果たす責任があります。
ところが、先月31日に発表された一連の決定は、求められている水準に見合ったものではありません。対策の基本となる資源循環戦略は、プラごみ排出を2030年までに25%削減することや、35年までに100%「有効利用」するなどの目標を掲げたものの、起点となる基準年があいまいであることに加え、目標達成の道筋が明確でありません。
「有効利用」にリサイクルのほか、「熱回収」を含めていることは極めて問題です。熱回収とは、プラごみを焼却し、その熱を利用するというものです。この処理は政府自身が「最終手段」だといってきたもので、戦略でも、リサイクルなどが「難しい場合」と一応条件をつけています。現在、政府はプラごみの国内処理状況について「85・8%の有効利用率」としていますが、リサイクルは27・8%にすぎません。残りの58%は熱回収されているのが実態です。戦略ではこの構成を大きく変える方向が見えません。
これまで東南アジアなどへ輸出してきた汚れたプラごみは、条約の改定で輸出が難しくなり、焼却に拍車がかかると懸念されています。環境省は産業廃棄物のプラごみの処理を新たに自治体に依頼していますが、事実上の焼却の押し付けです。これでは本格的な循環社会の実現は困難です。
戦略には「レジ袋有料化」が盛り込まれました。生活を見直す問題意識を高めることは大事ですが、消費者に対応を一方的に迫るやり方は、国民の納得を得られません。
不必要なプラスチック製品や、紙など代替品があるプラ製品をつくらない「減プラスチック社会」に踏み出すときです。
プラスチックの「大量生産・大量消費・大量廃棄」からの転換に向けた実効性のある仕組みづくりが求められます。そのためには、生産から廃棄までメーカーが責任を負う「拡大生産者責任」を徹底することが必要であり、法整備などが急がれます。
海洋プラごみ削減を急げ
海洋プラごみ対策の行動計画なども、従来の対策の延長線上のものがほとんどで、大幅削減できる見通しはとぼしいものです。実用化に至っていない新技術に頼っている点にも、“対応が先延ばしになる”と批判が寄せられています。実効性のある思い切った対策をすすめるべきです。日本政府が立ち遅れ姿勢を改めなければ、世界から信頼されません。