2019年7月27日(土)
諫早 解決の道は開門
農・漁業両立の環境を
干拓訴訟の上告審 結審
国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門をめぐり、漁業者側の訴えを認めて開門を命じた確定判決(2010年、福岡高裁)を強制しないよう国が求めた訴訟の上告審弁論が26日、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)で開かれ、結審しました。判決期日は追って指定されます。
14年に国が起こした同訴訟では、二審の福岡高裁が開門を認めない判決を出したため、漁業者側が上告していました。
漁業者側の吉野隆二郎弁護士は「国が確定判決を守らないことを裁判所が認めるのであれば、誰も裁判所など信用しなくなる」と厳しく指摘。干拓地営農者が開門を求めて提訴している現状も踏まえて「話し合いによる解決へ向けた適切な判断を行うことを期待する」と述べました。
一方で国側は、漁業者が訴訟を立ち上げた時点の漁業権は「10年の免許期間の経過で消滅した」として確定判決を一方的に否定。開門を認めない二審判決の維持を求めました。
福岡高裁で確定判決を勝ち取った原告でもある佐賀県太良町の漁師、平方宣清さん(66)は「有明海を再生するためには開門しかない」と強調。干拓地の農業への影響を防ぐための対策をとって開門し、「農業と漁業が両立する環境を取り戻すことを望んでいる」と訴えました。
また、国側の主張について「私たちにとって漁業権は何十年も継続してきたもので、10年で消滅するなど考えたこともない」と批判しました。
国会内報告集会
有明海の再生めざす
|
諫早湾干拓事業をめぐる別の2件の訴訟について最高裁は6月、開門を求める漁業者側の上告を棄却する決定をしています。最高裁は今回の訴訟判決で、何らかの結論を示すとみられます。
結審後、国会内で開かれた報告集会には有明海沿岸の漁業者や支援者ら約220人が参加。「よみがえれ!有明訴訟」弁護団の馬奈木昭雄団長は「最高裁は問題解決の展望を何も示さなかった。最高裁がいかなる態度を示そうと、私たちは有明海再生まで力を合わせて頑張っていきたい」と決意を述べました。
長崎県島原市の漁師は「まだゴールは見えませんが、私たちにとってかけがえのない本来の有明海を何としても取り戻したい」と語り、支援を呼びかけました。
日本共産党の田村貴昭衆院議員、山添拓参院議員が参加。田村氏は「農林水産省は20年間で400億円を投じて有明海再生事業を行ってきたが、貝や魚が取れず、ノリが色落ちしている。開門を求めるたたかいを今後も力強く進めていこう」と激励しました。