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2019年8月3日(土)

内定辞退率を販売

リクナビ 合否使用企業も

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(写真)就職情報サイト「リクナビ」

 インターネット上の就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア(東京)は1日、就職活動中の学生が内定を辞退する可能性(内定辞退率)を人工知能(AI)で予測し、そのデータを38社に販売していたと発表しました。学生に説明しないまま根拠不明の評価が企業側に提供されました。採用試験の合否判定に影響を与えた可能性があります。

 政府の個人情報保護委員会から学生への説明が不十分だと指摘され、7月31日付で販売を休止しました。

 問題となったのは、同社の「リクナビDMPフォロー」というサービス。リクナビのサイト上での学生の閲覧履歴などをAIで自動的に分析し、その学生が採用試験を受けている企業の内定を辞退する可能性を5段階で評価して、データを2018年3月から当該企業38社に販売していました。

 データの使用目的は内定辞退を防ぐ対策のためとし、企業側は合否判定に使わないことを約束。学生がリクナビに登録する際の利用規約(プライバシーポリシー)により、データの第三者提供について同意を得ていたと説明しました。

 しかし、データの提供は内定者の決定前に行われ、合否判定に使うことは可能でした。本紙の取材に対し同社の社外広報グループは「合否判定に使わないというのは紳士協定のようなもの。100%使われていないとは言い切れない。使っていたことがわかって提供を停止した企業もあった」と答えました。

 また、プライバシーポリシーの該当箇所には「行動履歴等」を分析して「採用活動補助のための利用企業等への情報提供」を行うことがあると書かれているだけで、内定辞退の可能性を予測して企業に提供しているとは理解できない文面になっていました。

就活学生裏切り 違法疑い

情報法制に関する研究政策提言をしている情報法制研究所理事 高木浩光さんの話

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 これは、「個人のキャリアを支援する」とうたう就職情報サイトが、就職活動中の学生を裏切っていたという話です。例えるなら、結婚相談所の運営側が女性に対し、相手方候補の男性について「この男性はあなたにアプローチしていますが、実はほかにもアプローチしていますよ」と教えるようなものです。

 「学生の同意を取った」という説明もおかしい。リクナビのプライバシーポリシーには「行動履歴等は、あらかじめユーザー本人の同意を得ることなく個人を特定できる状態で第三者に提供されることはない」と書かれています。これでは内定辞退率の第三者提供について同意を取ったことになりません。個人情報保護法に違反している疑いがあります。

 不正確な情報に基づいてコンピューターによる自動処理で個人の選別を行うこと(プロファイリング)の危うさが典型的に現れた事例でもあります。来年の個人情報保護法改正の中で、この危うさからの保護を法の目的として位置づける必要があります。


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