2019年8月9日(金)
世界大会・長崎 フォーラム
核兵器廃絶へ国際連帯
来年の米大会向け熱気
長崎市で開かれている原水爆禁止2019年世界大会・長崎は8日、フォーラム、特別集会、分科会、動く分科会を開きました。核兵器禁止・廃絶にむけた行動、非核・平和の北東アジア、憲法9条、被爆体験の継承など、多彩なテーマで学び、交流しました。
|
フォーラム「核兵器禁止・廃絶へ―政府とNGOの対話」では、政府代表1人とNGO側4人のパネリストの発言を受け、参加者が意見を交わしました。
オーストリア欧州統合外務省のゲオルゲビルへルム・ガルホーファー公使は、核兵器禁止条約に25カ国が批准し発効に向けて進展していると指摘。「条約に反対する国にも、核兵器の廃絶を求める国民は大勢いる。核兵器の危険性を訴え、核兵器がなくても安全は達成できると訴えよう」と語りました。
米国「平和・軍縮・共通安全保障キャンペーン」のジョゼフ・ガーソン議長は、来年ニューヨークで開催する原水爆禁止世界大会について、「運動にさらなる連帯をつくり、被爆者の証言に耳を傾け、気候変動反対の活動家にも発言してもらう場にしたい」と述べました。
国際平和ビューロー(IPB)のライナー・ブラウン共同会長は来年の核不拡散条約(NPT)再検討会議について「市民社会と議員が一緒になり、核兵器の一刻も早い廃絶につなげることができる可能性も秘めている」と強調しました。
韓信大学統一平和政策研究院の李俊揆(イ・ジュンギュ)先任研究員は、朝鮮半島の非核化に向けて、「東アジア全体での軍縮、信頼構築など多国間協議の枠組みをつくることが大切だ」と語りました。
原水爆禁止日本協議会の土田弥生事務局次長は、1955年に始まった世界大会が「核大国・米国で開催されるのは意義深い。被爆者をはじめ広範な運動と力を合わせたい」と表明しました。
参加者からは、核兵器廃絶と軍事費削減を結び付けて訴えるべきだとの指摘のほか、戦争被害者に対する国家的な謝罪を求めることを追求すべきだとの提案もありました。
分科会 多彩なテーマで学び交流
核兵器のない平和な世界を 草の根の行動
毎日国際署名集め
|
分科会「核兵器のない平和な世界を―草の根の行動」では、ヒバクシャ国際署名の推進など核保有国と核兵器依存国での運動の発展をめざして、海外代表を交えて交流しました。
冒頭、3人が特別発言しました。張本勲元プロ野球選手の姉・小林愛子さんは「7歳のとき広島で被爆した。生きていて何をすべきか。地球上から核兵器をなくすことだと思い原爆の語り部をしてきました。毎日ヒバクシャ国際署名を集め、これからも頑張ります」と発言すると、大きな拍手が起きました。
鹿児島・屋久島からの代表は、初めて国民平和大行進を行い、住民の1割1800人以上からヒバクシャ国際署名を集めた活動を報告。神奈川原水協の代表は「被爆者とともに核兵器禁止条約の発効を」を合言葉に、国民平和行進を進めていると発言しました。
アメリカ・ピースアクションのロザリー・ブルックスさんは「来年のNPT(核不拡散条約)再検討会議や世界大会ニューヨークが大事だ。核兵器や軍事につぎ込む膨大なお金を生活に回せと、他の分野の若い活動家らにも参加を呼びかけたい」と語りました。
非核・平和の北東アジアと運動の役割
禁止条約にこそ道
「非核・平和の北東アジアと運動の役割」の分科会には152人が参加しました。米国「平和・軍縮・共通安全保障キャンペーン」のジョゼフ・ガーソン議長、韓国「社会進歩連帯」のキム・ジンヨン政策・教育局長、原水爆禁止日本協議会の川田忠明全国担当常任理事の提言を受け、討論・交流しました。
このうちキムさんは、北朝鮮が核兵器を持てば、日本でも韓国でも右翼的な考えの人たちが、核武装論を持ち出し、北東アジアの平和は実現しないと指摘。平和の道は核兵器禁止条約にこそあるとのべ、「条約に参加するよう日韓が連帯することをよびかける」と語りました。
川田さんは、日本政府の外交政策が破綻していると指摘し、北朝鮮に対して軍事ではなく、憲法9条を生かした外交が必要だと指摘。「日朝平壌宣言に基づいて話し合うことが大事だ。被爆国として核兵器禁止条約に参加すれば大きな役割を果たすことができる」とのべました。
質疑応答では、北朝鮮の弾道ミサイル発射や日韓対立などの問題が取り上げられました。
被爆体験の継承・普及と援護連帯
父の骨 今も帰らず
|
「被爆体験の継承・普及と援護連帯」がテーマの分科会では、日本と韓国の被爆者8人が証言しました。
長崎原爆被災者協議会の大塚一敏さんは、当時10歳。爆心地から2・8キロの地点の国民学校で被爆しました。大塚さんは、香焼島から撮影されたきのこ雲の写真をかざし、長崎の被爆の実相を語るとともに、自分のきょうだいとその家族が原爆で受けた健康被害を語りました。
韓国原爆被害者協会理事の李圭永(イ・ギュヨン)さんは、広島で被爆。「父は今も行方不明のまま。父の遺骨を拾えていない、なんと親不孝なことでしょう」とのべました。
日本被団協原爆被爆者中央相談所相談員の原玲子さんが、求められている被爆者援護について発言。宮原哲朗弁護士が原爆症認定集団訴訟やノーモア・ヒバクシャ訴訟について報告しました。
被爆体験伝承事業で研修を受けているなどの発言がありました。
160人の参加者の1割が10代、20代でした。
憲法9条守り、非核平和の日本を
改憲断念へ共同を
「憲法9条守り、非核平和の日本を」と題した分科会では、全労連の長尾ゆり副議長が問題提起しました。「参院選で9条改憲に痛打を与え、政治局面を変えた。その力は市民と野党の共同にある」と強調。「3000万人署名」を軸に共同を広げて、改憲を断念に追い込もうと訴えました。
講演で日本反核法律家協会事務局長の大久保賢一弁護士は、核兵器の登場で「文明と戦争は両立できない」との認識が9条誕生の背景にあったと指摘。「人類が核兵器を終わらせるのか核兵器が人類を終わらせるのかが問われる核の時代に、9条の意義はきわめて大きい」と述べました。
報告した、みやこ9条の会の上里清美さんは、沖縄・宮古島の軍事基地化とのたたかいを紹介し、「戦争する国づくりを許さず、美しい自然と暮らしを守りたい」と発言。岩手県革新懇の国分博文事務局長は、市民と野党の共闘を力に3000万人署名やヒバクシャ国際署名が前進していると述べ、「思い切って共同を広げ運動を発展させる」と述べました。
民青秋田県委員長の蛭川秀紀さんは、陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」反対運動の広がりを報告。参院選でも野党統一候補が勝利したと強調し、「諦めず共同を広げて配備撤回を勝ち取るまで頑張る」と述べました。
青年のひろば 被爆実態追体験学習交流
真実知り伝えたい
|
「青年のひろば」では、青年が身元不明の遺骨を納める寺を訪れて話を聞き、原爆の実態を追体験しました。
真宗大谷派(東本願寺)長崎教務所には、身元も分からないまま野ざらしになっていた被爆者の遺骨が納められています。終戦直後に生まれた亀井廣道さん(萬行寺住職、73)の話を聞きました。
僧侶の菅谷太希さんが収骨所で骨箱を開けて、「小さな女の子の骨です」と説明すると、参加者は息をのんで見つめていました。
爆心地では腐敗した遺体がにおいを放っていました。亀井さんの調べによると、教務所の婦人会らが遺体を集めて荼毘(だび)に付す作業を続け、その遺骨が納められました。
被爆当時、爆心地から6キロメートル北にある亀井さんの生家の萬行寺には負傷者が次つぎと運び込まれました。その人たちを「助からんばい」といって選別していたといいます。亡くなった人は馬車で山すそへ運び、穴を掘って埋めました。
亀井さんは「原爆を体験しなくても、話を聞いて経験することができます。家族に70代、80代の人がいたら傍らに寄って話を聞いてほしい。今ならまだ間に合う」と語りました。
大阪府から来た学童保育指導員(23)は感想交流で、「小学生で被爆した人の体験を読んで衝撃を受けた。想像することで戦争はだめってわかる。みんなも読んでほしい」と訴えました。
北海道から参加した女子学生(19)は「こんなに詳しいことをやってくれると思っていなかった。興味を持ったことを掘り下げて真実を知りたい。興味のない友達にも真実なら伝えられるかもしれない」と話しました。
子の未来に基地ない日本へ
特別集会
|
特別集会では「核と基地のない日本、沖縄との連帯を」のテーマで議論しました。
冒頭、在職中の昨年8月8日に死去した翁長雄志前沖縄県知事の1周忌にあわせて黙とうしました。
稲嶺進前沖縄県名護市長がスピーチし、県民が繰り返し示す辺野古基地建設反対の民意を、政府が「国には国の民主主義がある」と無視する姿勢を批判。「日本の民主主義や地方政治が壊滅状態になっている」とのべ、「基地問題は沖縄だけではない。子や孫の未来のためにどう行動するべきか考えてほしい」とよびかけました。
米国の「戦争を超えた世界」日本支部のジョゼフ・エサティエさんは「米国人は沖縄を知らない。核兵器を落とそうと思ったらそこに住む人間は考えられない。核兵器があるのは無知や差別があるからだ」とのべ、「あらゆる差別を心から消し去ろう」と語りました。
非核フィリピン連合のコラソン・ファブロス事務局長は、フィリピンから米軍基地を撤去して「良かった」とのべ、「沖縄に基地がある限り核兵器や基地のない世界は訪れない」と語気を強めました。