2019年8月20日(火)
国立大授業料免除 後退の危惧
現行並みの予算措置を
先の通常国会では、「高等教育無償化」と安倍内閣が称した修学支援法が成立しましたが、国立大学関係者のなかでは、授業料免除が後退するのではないかとの危惧が広がっています。8月末の概算要求で現行制度並みの予算が措置されるかが問われています。
修学支援法で減
現在の国立大学の授業料免除は、文部科学省の運営費交付金の中で措置されています。2019年度予算では365億円が計上されています。これは、学部生の12・2%(4万9千人)、修士課程で12・0%(1万1千人)、博士課程で13・0%(6千人)を免除できる額です。これを財源に、各大学がそれぞれの基準で授業料を減免しています。
修学支援法による授業料免除は、国公私立大学・専門学校に共通の基準となります。対象が日本国籍の学部生に限られ、大学院生と留学生は対象外です。全額免除は4人家族で世帯収入が約270万円以下、3分の2免除が270万~300万円、3分の1免除が300万~380万円の学生に限られます。
ある国立大学では現在、4人家族で世帯収入が約500万円の学生まで全額免除となり、約700万円まで半額免除となっています。修学支援法による免除総額は現行の約5分1に減ってしまいます。この差額が運営費交付金で措置されない場合、大学が自腹を切らないと授業料免除が後退することになります。
「無償化」と言いながら、消費税増税を押し付け、さらに現行制度よりも後退させることは許されません。
値上げ時の約束
1971年度まで国立大授業料は、年間1万2千円と低廉でした。ところが、72年に政府が「受益者負担」論を口実に授業料を3倍化しました。その代替措置として、免除枠が5%から10%に拡大され、82年には12・5%まで拡充されました。
この到達点を掘り崩すことは、値上げ時の約束をほごにすることになります。
野党各党は、修学支援法案の審議で、授業料免除が後退しないように繰り返し求めました。柴山昌彦文科相は「現行制度のうち新制度と支援が重ならない部分の支援については、今後、予算要求に向けて適切に検討することとしたい」(衆院文部科学委員会、3月22日)と答弁しています。
日本共産党の畑野君枝衆院議員の7月末の問い合わせに対し、文科省の担当者は、大学院生の免除は、8月末の概算要求で従前どおり要求する予定だと説明しました。一方、学部生については、現行制度と新制度の各大学での差額を調査しており、それをふまえて、財務省と折衝しているとの説明にとどまりました。
学部生についても後退しないように予算措置を講じるべきです。
(土井誠 党学術・文化委員会事務局次長)