2019年8月22日(木)
主張
最低の食料自給率
農業を本格的に立て直すとき
農林水産省は、2018年度の食料自給率が17年度より1ポイント低下し37%(カロリーベース)になったと公表しました。小数点以下もみると、大冷害に見舞われた1993年度の37・37%を下回り、37・33%と過去最低の水準です。
安倍晋三政権は15年、食料自給率を25年度に45%へ引き上げる目標を決めています。その達成どころか、逆に目標から遠ざかっており、政府の食料政策や農政のあり方が根本から問われています。
生産基盤の弱体化で
世界の食料需給が「中長期的にはひっ迫」と政府自身も予測しています。そのもとで食料の6割以上を外国に依存していること自体、大問題です。その低い自給率をさらに下げていることは、国民の生存条件を揺るがすものです。
農水省は18年度の自給率低下の主な要因に天候不順による小麦と大豆の生産減などを挙げています。しかし、気象の変化などによる生産への影響だけでは、自給率低下が長期間続いていることの説明にはなりません。国産が大半を占めるコメの消費減少に加え、農業の生産基盤の弱体化が、いよいよあらわになってきているのです。
とりわけ深刻なのは、農業生産の担い手の高齢化と急速な減少です。最近10年間に農業経営体は32%減少し、そのテンポは早まっています。農業を中心的に担う基幹的農業従事者は10年の205万人から19年の140万人へと減少し、その42%は70歳以上です。近い将来、大量リタイアによる農業者の激減は避けられません。耕作放棄地も年々増え、いまや全耕地面積の約1割に達しています。
歴代自民党政権がアメリカや財界の言いなりに食料を外国にゆだね、農産物の輸入自由化、農業切り捨ての政治を続けてきた結果です。国内農業は、外国産と競合しない作物や分野に狭められ、多くの農業経営が成り立たなくされ、若者が安心して農業に就ける条件が著しく損なわれてきたのです。
安倍政権の6年半は、環太平洋連携協定(TPP)を強行し、日欧の経済連携協定(EPA)と合わせて畜産物などの輸入拡大に道を開いてきました。「攻めの農政」と称する大規模化、競争力一辺倒の農政も、中小農家の離農を加速させ、中山間地の農地を荒廃させるなど生産基盤の弱体化に拍車をかけています。この上、トランプ米政権に「ノー」といえない安倍政権が日米貿易交渉を続けて、新たな合意をすれば、日本農業を丸ごと売り渡すことになり、日本は食料自給の土台を決定的に壊されることになりかねません。
日本が食料自給率の回復・向上に踏み出すことは、国際社会に対する責務でもあります。
農政の流れの転換を
農業をつぶしてきた歴代自民党政権の農政の流れを根本から転換し、農業を本格的に立て直す方向で、政治と社会の力を総結集することが不可欠です。
輸入自由化路線をやめ、国内農業の増産を可能にする貿易ルール=食料主権を回復することが必要です。国土条件をフルに生かした農林漁業の多面的な発展、価格保障や所得補償などによる農業経営条件の抜本的な改善、若者が安心して就農できる条件の整備などで大小多様な家族経営が成り立ち、農業の多様な担い手を大幅に増やすことなどが急務です。