2019年9月14日(土)
「宝の海」再生へ頑張る
諫早湾差し戻し最高裁判決
開門求める漁民ら決意
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13日、諫早湾干拓の潮受け堤防排水門の開門について、国が強制しないよう求めた訴訟の上告審で、漁業者側の訴えを認める判決が出ました。開門訴訟で長いたたかいを続けてきた平方宣清さん(66)=佐賀県太良町=は判決後、感無量の表情を浮かべて記者団の前に姿を現しました。
「司法がまた、善良な漁民と国民に対して一筋の希望を与えてくれたと思っています」。2010年に福岡高裁で、確定判決を勝ち取った原告の一人です。「宝の海」再生が実現すると信じてから8年半、国は開門義務を果たそうとせず、有明海の漁業環境はさらに悪化。平方さんが従事してきたタイラギ(高級二枚貝の一種)漁も7年連続で休漁中です。
その上、昨年の福岡高裁での不当判決。平方さんは「いつつぶれてもおかしくなかった。全国の多くのみなさんの支えがあったからこそ頑張ってこられました。私たちだけでは裁判所を動かすことはできなかった」と感謝の意を表しました。福岡高裁で次のたたかいが始まります。開門反対の干拓地営農者も納得できる解決に向けて対話を求め、豊かな有明海再生へ引き続き頑張る決意を訴えました。
判決後の報告集会には、日本共産党の田村貴昭衆院議員、紙智子参院議員も駆けつけ、漁業者のたたかいを激励。立憲民主党の菅直人衆院議員も参加しました。
解説
和解協議で開門含むあらゆる選択の議論を
国営諫早湾干拓事業(長崎県)によって有明海の深刻な漁業不振が続いているとして、潮受け堤防排水門の開放を求める漁業者らの訴えを認めた福岡高裁確定判決(2010年末)。8年半がたちながら、国は開門義務に背き、憲法違反の異常事態が継続しています。
審理が福岡高裁に移る一方で、長崎地裁では諫早・雲仙両市の漁業者による即時開門を国に求めた訴訟が係争中です。また、これまで開門阻止を掲げる訴訟に参加してきた干拓地営農者グループから農業法人2社が離脱し、国などを相手に損害賠償や開門を求め、同地裁で争っています。
開門反対一色だった営農者の中に変化が生まれたのは、国や県による優良農地とのふれこみで入植したものの、鳥類の食害など農作物の被害を受け、少なくない経営体が赤字に陥っているからです。営農をやめる例も相次ぎ、国が約2500億円の巨費を投じ強行した事業ですが、「まともに営農できない農地」になりつつあります。
営農者の開門訴訟でも原告代理人の漁業者側弁護団は、開門せずに続く現在と将来の農業被害の問題とともに、開門しても農漁業を両立させるすべがあることを両開門訴訟などでも徹底して明らかにするとしています。
複数の訴訟が乱立し、複雑さが増している以上、真の解決の道は国、漁業者、営農者の3者による和解協議にあります。その際、既に1年以上も費やされた、開門しないことを前提にした協議では全く意味がありません。差し戻しを機に、福岡高裁は開門を含むあらゆる選択肢を議論する和解協議を呼びかけるべきです。
(岡素晴)