2019年9月25日(水)
国連気候行動サミット 地球温暖化防止めざす
世界目覚め変革しつつある
若者は グレタさんの演説
23日の国連気候行動サミットで、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)が行った演説(要旨)を紹介します。
私のメッセージはこうだ。私たちはこれからもみなさんを見張り続ける。
まったくもって間違っている。私はここにいるべきではない。海の向こうの学校にいるべきだ。みなさんは私の夢も、私が子どもとして過ごすことも、中身のない言葉で奪ってしまった。それでも私は運のいい方だ。被害を受けている人たちがいる。死につつある人たちがいる。生態系全体が崩壊しつつある。私たちは大量絶滅のとば口にある。でも、みなさんが口にできることと言えば、お金のことと、経済成長は永遠に続くというおとぎ話だ。
よく言われることだが、10年で二酸化炭素排出量を半減したとしても、気温上昇を1・5度以下に抑える確率は50%しかない。人の手に余り、後戻りできない連鎖反応が始まる危険がある。50%ならおそらくみなさんは容認できるだろう。しかしその数字には臨界点も、再検討の過程も、有害な大気汚染に隠れた温暖化の上乗せも、公平さや気候正義といった見方も盛り込まれていない。そうした数字が頼りにするのは、私の世代がみなさんの排出する数千億トンもの二酸化炭素をまだありもしない技術で吸収することだ。だから50%の危険があるということは、私たちにはただ受け入れられない。それがもたらす結果を受け入れねばならないのは私たちだ。
地球の気温上昇を1・5度以下に抑える確率を67%にするという、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最善の見通しを実現するには、2018年1月1日時点で二酸化炭素の排出許容量(炭素予算)は420ギガトンだった。今日、その数字はすでに350ギガトンまで減っている。これがこれまで通りのちょっとした技術を用いたやり方で解決できるなどとよくも言えたものだ。現在の排出水準では、炭素予算の残りは8年半足らずでまったくなくなってしまう。
みなさんは私たちを失望させつつある。しかし若者は、みなさんが自分たちを裏切っているということを理解し始めている。未来の世代の目はみなさんに注がれている。もし私たちを裏切ることを選ぶなら言おう、私たちはみなさんがこの問題から逃げることを許さない。ここで今、一線を画すべき時だ。世界は目覚めつつある。そして変革は起こりつつある。
世界は 77カ国「50年までに実質ゼロ」
日米、発言機会なし
【ニューヨーク=池田晋】ニューヨークの国連本部で23日、各国の首脳らがパリ協定に基づき地球温暖化対策を加速する方策を提示する気候行動サミットがグテレス国連事務総長の主宰で開催されました。グテレス氏は閉会演説で、先進国を中心に77カ国が2050年までの炭素排出実質ゼロを約束したと表明。今世紀末までに気温上昇を1・5度未満に抑えるにはほど遠いとする一方、「世界は目覚めつつあり、政府への圧力と、機運は増している」と語りました。
サミットでは、各国首脳級に加え、温暖化対策を推進する企業や自治体のトップらが新たな取り組みを次々と発表。グテレス氏はサミットでただ演説するのではなく、「具体的な計画」を持ってくるよう求めていたため、主要な排出国でありながら温暖化そのものを否定する米国、石炭火力発電所の新設を進める日本に発言の機会は設けられませんでした。
グテレス氏は「最大の損失は石炭発電所をつくり続けることだ」と述べ、20年以降の新設はやめ、石炭発電から撤退するよう改めて要求。▽化石燃料業界への助成▽石炭発電所の新設▽明白な事実の否定―をあげ、「自分で落とし穴を掘るのをまずやめなければならない」と削減目標の上乗せどころか、逆行する国を暗に批判しました。
ニューヨーク市内では同日、国際環境活動家たちが安倍晋三首相を模した高さ4メートルの巨大バルーンを掲げ、日本政府が進める石炭火力発電所の新設プロジェクト支援に抗議しました。
多くの先進国・途上国は取り組みを前に進めています。太平洋の島国マーシャル諸島は、2050年までに排出実質ゼロの目標を定め、温暖化を「国家危機」と宣言する決議を国会に提出したと表明。ドイツ、スウェーデン、ノルウェーなどが途上国を支援する「緑の気候基金」の拠出金を倍増させると約束しました。
安倍政権は 無責任な「中身のない言葉」
「あなた方の中身のない言葉が私の夢も子どもとして過ごすことも奪ってきた」。ときに怒りで声を震わせながら、グレタ・トゥンベリさんが各国首脳に対し、「気候の危機」への対応の遅れを糾弾した言葉は、そのまま安倍政権に突き刺さります。
仏独など各国首脳が出席したにもかかわらず、安倍首相が出席さえしなかったことが、気候変動問題に対する安倍政権の無責任ぶりを示しています。
具体策は語れず
加えて、「国連気候行動サミット」に参加するため米ニューヨークを訪問した小泉進次郎環境相の言動が、世界のひんしゅくを買っていることです。小泉氏は22日の同地での海外メディアの記者会見で、脱石炭火力発電をどう進めるのかと問われ、「(火力発電を)減らす」と回答したものの、さらに記者から「どうやって」と問われると、答えに詰まったうえ、「先週大臣になったばかりだ。環境省のスタッフらと話し合っている」と発言。具体策については回答できませんでした。さらに鍵は若者だとして、「気候変動のような大きな問題に取り組むことは楽しく、かっこよく、セクシーであるべきだ」などと述べました。小泉氏の発言こそ、グレタさんが批判した「中身のない言葉」であり、日本政府の無責任さの表れです。
ロイター通信は小泉氏の発言記事を配信(23日)。日本の気候変動対策について「小泉氏は何ら詳細を語らなかった」と伝える一方、日本がG7(主要7カ国)で唯一、石炭火発の容量を増加させ、政府と銀行がアジアでの新規石炭発電に財政的に一役買っていると指摘しました。
際立つ逆行ぶり
今回のサミットで問われたのは「気候正義」のための各国の実行の加速です。グテレス国連事務総長は「パリ協定」(2015年)が定めた産業革命前からの気温上昇1・5度から2度未満の抑制目標のために、温室効果ガス排出量を30年までに45%に削減し、50年までに実質ゼロとすることを要請。サミット閉幕までに77カ国が実行を約束しました。各国首脳は「温暖化対策への財政投入額を2倍の40億ユーロ(約4730億円)にする」(メルケル独首相)など次々に表明しました。
一方、日本はサミットで登壇さえせず、世界の流れに対する逆行ぶりが際立ちました。
安倍政権の「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(6月11日閣議決定)では50年までの温室効果ガスの削減目標は80%、30年の削減目標は13年比でわずか26%。石炭火力発電からの脱却の方向を示さず、石炭火発の新規計画は22基にも上ります。
国際的な要請にまともな具体策すら持たず、市民の悲痛な訴えを「中身のない言葉」で踏みにじっているのが安倍政権です。(日隈広志)