2019年9月27日(金)
主張
日米貿易協定合意
異常な一方的譲歩 承認許すな
安倍晋三政権とアメリカのトランプ政権の間で行われてきた日米貿易交渉は恐れていた通り、日本側の大幅譲歩で終わりました。
23日ニューヨークで開かれた茂木敏充外相とライトハイザー米通商代表の会談を受けた25日の首脳会談で、安倍首相とトランプ大統領は、農産物や工業品などについての貿易協定に最終合意し、共同声明に署名しました。日本は牛・豚肉や穀物など農産物市場を「環太平洋連携協定(TPP)水準」まで開放します。日本の農畜産業にとって死活にかかわる合意です。
“密室”の交渉過程で
会談終了後、安倍首相は「ウィンウィン(双方の利益)の合意」だといいましたが、トランプ大統領は「米国の農家と牧場主にとって、巨大な勝利だ」と自慢しました。日本がアメリカに約70億ドル(7500億円)の農産物市場の開放を約束する一方、アメリカは産業機械などの関税を削減・撤廃するものの、日本が求めてきた自動車や同部品の関税撤廃に応じません。日本の一方的な譲歩が鮮明です。
貿易協定などは本来、国内での審査を経て合意するのが原則です。ところが今回は“密室”の交渉で、内閣法制局などの審査もなく発表した、異例のやり方です。今後1週間程度で法的な審査などを終え、閣僚・大使間で改めて正式に署名するとしています。協定がまとまれば、日本の場合、国会での承認手続きが行われます。米側は大統領権限による合意なので、議会承認を省略するとされています。
トランプ氏は大統領就任後、日米など12カ国で合意していたTPPから離脱したため、米国内では牛・豚肉や穀物などの対日輸出で、オーストラリアやニュージーランド、欧州連合(EU)より不利になったとの不満が噴出しました。日米貿易交渉は、トランプ氏が来年の大統領選を有利にたたかうためにも、2国間交渉で自国に有利な合意を日本に押し付けるために始まったものです。トランプ大統領は日本の参院選前から、「良い発表ができると思う」と公言し、安倍首相との“密約”が大問題になっていました。
TPPは輸出大国や多国籍企業に有利な貿易や投資のルールづくりで、その「水準」自体が危険です。実際、日米の合意の結果、現在38・5%の牛肉の関税は段階的に9%に削減、豚肉の関税も大幅に引き下げられます。畜産物の低関税輸入枠を設け、トウモロコシの大量購入も約束するなど、実態は明らかに、TPPの「水準」を超えるものです。
すでにオーストラリアやニュージーランドなどからの牛・豚肉などの輸入が急増しています。これにアメリカからの輸入が加われば、日本の農畜産業はいよいよ成り立たなくなります。文字通り、“売国”の協定に他なりません。
協定阻止の世論と運動を
共同声明が、「関税や他の貿易上の制約、サービス貿易や投資に係る障壁、その他の課題について交渉を開始する」としたことは重大です。貿易だけでなく、サービスや投資などを含む「包括的」な協定づくりは中止すべきです。
トランプ政権は協定発効を来年1月1日と見込んでいます。協定の承認案が審議される10月からの臨時国会に向け、日本の農畜産業を破壊する協定を阻む世論と運動を広げることが重要です。