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2019年10月2日(水)

主張

英語検定の利用

公平欠く制度は中止しかない

 2021年度の大学入学共通テストで利用する英語の民間検定試験が、20年4月から順次始まります。ところが、関係者から指摘されてきた多くの問題点はなんら解決されていません。このことに受験生の間で大きな不安が広がり、大学、高校、予備校の関係者から、実施の中止を求める切実な声が文部科学省に寄せられています。

文科省対応が混乱広げる

 全国高校長協会は、文科省に対して7月に「不安の解消を求める」要望を出したのに続き、9月10日には「延期及び制度の見直しを求める要望書」を提出しました。全国の校長の7割が延期を求めているといいます。

 当事者である受験生からは「不安は払しょくされるよりむしろ日々増している」「犠牲になるのは僕たち高校生」など深刻な懸念が相次いでいます。「利用中止」を求める国会請願署名は約8千人分提出され、文科省前の抗議行動に多くの関係者が集まっています。

 こうした事態に、萩生田光一文科相は「中止すれば混乱が生じる」とのべ、予定通りの実施を表明しました。しかし、23年度までは大学入試センターの英語試験が継続されるので、民間試験の利用を中止しても入試に差し支えはありません。民間試験の利用に固執する文科省の姿勢こそ、学校現場に混乱をひきおこしているのです。

 日本共産党国会議員団は9月17日、「民間英語検定試験の利用の中止を求める緊急申し入れ」を萩生田文科相に行いました。27日、共産、立民、国民、社民の各党が野党合同ヒアリングを開き、文科省に「中止の決断」を迫りました。その中でも新たな問題が明らかになっています。

 文科省は、目的も難易度も異なる七つの民間試験の成績を、CEFR(欧州で使われている言語能力の評価)と対照させる方針です。この対照は、各実施業者の申告にもとづき、文科省の作業部会が了承しましたが、同作業部会メンバー8人中5人は実施業者の幹部でした。民間業者の自作自演で作られた対照表に、公平性を保障する客観的裏付けはありません。

 公平性が疑われるため、大学側の対応も混乱しています。朝日新聞と河合塾の共同調査(7月)では、大学の65%が民間試験の利用を「問題がある」とし、36%が「やめるべき」だと答えています。

 現在でも3割の大学が利用するかどうか未定であり、利用を決めた大学も成績を合否判定にどの程度を反映させるかは公表していません。文科省が各大学に「入試の大きな変更は2年前に公表する」と通知していたことからも、不正常な事態です。文科省は、9月中に公表しない場合は民間試験を利用させない旨を各大学に伝えましたが、そうした強引なやり方にも批判の声が上がっています。

最大の被害者は受験生

 野党合同ヒアリングで発言した高校生は、母子家庭で生活が苦しいのに民間試験のための教材費や受験料などで経済的負担が不安だと訴えました。試験実施業者が対策本を出したり講座を開いたりすることに「中間搾取を感じる」との批判も出されました。

 最も被害を受けるのは受験生です。関係者の切実な声に誠実に向きあい、英語の民間検定試験利用を中止し、制度の見直しを行うよう、政府・文科省に強く求めます。


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