2019年10月2日(水)
原発マネー還流疑惑
元助役、関電と日常的に面会
町民「真相知る権利ある」
関西電力の八木誠会長、岩根茂樹社長ら幹部など20人に、高浜原発がある福井県高浜町の森山栄治元助役(3月に90歳で死去)から「原発マネー」が還流していた疑惑で、電力会社と原発立地自治体の有力者の癒着という「闇」が浮き彫りになりつつあります。疑惑の渦中となり動揺が広がるなか町民たちの思いは―。(丹田智之)
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福井県高浜町ルポ
関電やその関連会社に勤める住民も多い高浜町。若狭湾に面した人口1万人ほどの小さな町にいま、「原発マネー」還流疑惑の真相を知ろうと多くの報道陣が入っています。
口閉ざす住民
森山氏について役場近くなど住宅街で取材したものの、ほとんどの住民は「お話しすることはない」。町内の企業約20社に電話で取材を申し込んでも、「対応できる者がいない」と口をそろえます。
関係者が口を閉ざすなか、原発関係の仕事に就いていた男性(75)に、話を聞くことができました。「高浜原発3・4号機の増設時に億単位の“協力金”が地元に入ってきた。その当時、町長に代わって窓口となっていたのが森山助役です。退任して30年にもなる最近まで関電との関係が続いていたということには驚いた」と言います。
森山氏は、高浜原発に近い海沿いの集落で長く暮らしていました。集落内には原発作業員が宿舎として利用する旅館や民宿が点在しています。
その近辺で住民に話を聞くと、森山氏が助役時代に町議だった男性に出会いました。森山氏について「関電や関連会社の人と日常的に会って要望などを伝えていた。退任してからも頼りにされていたのではないか」と語ります。
疑惑の発端となった金沢国税局の税務調査(昨年1月)では、原発関連事業を受注する町内の「吉田開発」から手数料として森山氏に約3億円が渡っていたとされます。
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仕事もらえる
別の地域で、元町議の男性が「真相は分からない」と前置きしつつこう証言します。「森山氏は高浜町で原発を推進する中心になった人。報道で地元の有力者や『顔役』と言われているように、助役を退任してからも関電や地元業者に対する強い影響力を持っていた。そういう立場で動けば、利権は必ず付いてくる」。この元町議は「金品を受け取った関電にも責任がある」とも語ります。
元町職員の女性(69)も「森山さんと吉田開発の関係は以前から聞いていました。業者から『森山さんに言えば仕事がもらえる』とのうわさもよく耳にした。不正があったとしたら許されないことだ」と言います。
町内で旅館を営む女性(42)は、困惑した様子でこう話します。「関電の会見をテレビで見て驚きました。近所の人たちの間でも話題になっています。なぜ3億2千万円もの金品が関電の幹部に渡ったのか、町民として真相を知る権利がある」
日本共産党の渡辺孝町議は「高浜町と関電、地元企業との癒着構造があるか、徹底的に解明する必要がある」と指摘しています。