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2019年10月8日(火)

主張

海洋と温暖化

地球の未来への責任を果たせ

 国連の気候行動サミット(9月23日)をはさみ、22~27日まで全世界でとりくまれた若者らの行動「グローバル気候マーチ」には、185カ国700万人が参加し、各国政府に真剣な対策の実行を迫る大きなうねりとなりました。

 科学者らでつくる国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は同25日、温暖化によって海面上昇の速度が上がっており、高潮や巨大台風による沿岸部の被害がふえる危険などを予測した特別報告書を公表し、強い警鐘を鳴らしています。気候変動の危機的事態を打開する本気の行動は待ったなしです。

危機的な状況が加速

 IPCCが今回公表した「海洋と雪氷圏に関する特別報告書」では、温暖化が海と、極地・高山地域の氷に与える影響に焦点を当てました。これによると、海面の高さはこの100年ほどで最大21センチ上昇しました。グリーンランドや南極などの氷が解けて上昇が加速しています。

 こうした状況が続けば、1986年から2005年の期間と比べ、2100年に海面は最大1・1メートル、2300年までに最大5・4メートルの上昇につながる恐れがあると指摘します。また、温暖化で、台風、ハリケーンなど熱帯低気圧の勢力が強くなり、降水量がふえるとしています。

 海水温の上昇や、二酸化炭素吸収による海水の酸性化が進めば、海の生態系への打撃も避けられません。何も対策を取らなければ、海洋生物に悪影響を及ぼし、今世紀末に漁獲量は20~24%ほど落ち込む恐れがあるとしました。

 四方を海に囲まれた日本は、強い危機感をもって対策を取る必要があります。漁業国日本の資源の衰退という事態も予想されます。千葉県などに大規模停電を長くもたらした台風15号など、この国への影響は大きくなるばかりです。

 IPCCは8月8日にも「気候変動と土地」に関する特別報告書を出しました。「1・5度」上昇でも、水不足、山林火災、永久凍土の融解、食料生産の不安定化などが進むが、「2度」上昇になれば、永久凍土と食料生産にさらに高いリスクが及ぶとのべました。

 一連の科学的見解によって、人類社会がめざすべき「1・5度未満」の実現が切実な課題であることが鮮明になっています。

 各国首脳が発言した国連総会一般討論の冒頭で、グテレス事務総長は、「かつての気候変動は、いまや気候危機だ」とのべて、「1・5度未満」に向けた行動の強化をよびかけました。ところが安倍晋三首相は、トランプ米大統領とともに気候変動問題に触れませんでした。気候行動サミットで発言がなかったことに続くものです。4日開会した国会での所信表明演説でも、首相は温暖化対策に全く言及しませんでした。地球の未来がかかった問題に責任を果たす姿勢を示さないことは大問題です。

世界の流れに逆らうな

 12月には国連の気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)がチリで開かれ、来年から温暖化防止の世界的枠組み「パリ協定」が本格始動します。温室効果ガスの削減目標を引き上げようとせず、石炭火力発電への依存を続ける安倍政権への批判は高まるばかりです。世界の流れに逆らうことはやめるべきです。


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