2019年10月10日(木)
教員の疲労困ぱい 正そう
教育関係者・過労死遺族ら発言
変形労働制撤回求め集会
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教員の長時間労働をなくそうと8日、東京都内で開かれた集会は、教育関係者や国会議員で満席となり、参加者は現役教員や過労死した教員の遺族らの発言に耳を傾けました。
集会は、岐阜県の公立高校教員の西村祐二さんと、公立中学校教員の夫を過労で亡くした工藤祥子さんが呼びかけたもの。工藤さんはあいさつで、「夫は、夏休み前に倒れました。過労死ラインで働く教員と、その教員に子どもを預ける問題に目をむけ、行政に直接、声を届けていこう」と訴えました。
文部科学省は、学校に導入をねらう「1年単位の変形労働時間制」について、学期中の労働時間を延長する代わりに夏休みを増やし、「総じて勤務時間を短縮するため」と説明しています。
導入条件ない
講演した名古屋大学の内田良准教授は、労働時間に歯止めがなく、夏休みでも残業をしている実態を指摘し、「毎月の労働時間が大幅に減るまでは変形労働制の導入条件はない」とのべました。
西村さんは「夏休みのまとめ取り」は現行の法律内でも可能であるとして、岐阜市が16日間の「閉庁日」を設け、教員の95%が満足している例を紹介。「業務量に合わせて勤務時間を延ばすよりも、文部科学省には業務を削減するか、業務量に見合う定員にして、8時間で帰れる職場づくりをしてほしい」と語りました。
教育学会会長の広田照幸日本大学教授は、連日12時間働いている教員が「本なんて読めない」と語る現状を紹介。「教員は常に新しいことを学び続けなければいけない」とのべ、スキルアップのための余裕が必要だと指摘しました。「1年変形労働制」では、実質的な労働は減らないとして、「労使協定も結ばないとなれば、長時間労働が固定化する」と警告しました。
呼びかけ人の西村さんはこれまで、インターネット上で「斉藤ひでみ」という仮名で、教員の働き方について発信してきました。「1年単位の変形労働時間制」撤回を求めるネット署名は3万1830人分に達しています。
健全な職場を
教員らから「変形労働制では、日々の疲労回復ができない」「学校には閑散期などなく、変形労働制はなじまない」など数多くのコメントが寄せられています。西村さんは「私たちの声を現場のエビデンス(物事を決める際の裏付け)として大切にしてほしい」と訴えました。
全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表は「将来を担う子どもたちを育てる先生が、疲労困ぱいでよいはずがない」と強調。与野党の議員に向けて「この集会が健全な職場づくりへつながることを求めます」と語りました。