2019年11月4日(月)
NHK日曜討論 笠井政策委員長の発言
日本共産党の笠井亮政策委員長は3日のNHK「日曜討論」で、相次ぐ閣僚の辞任や英語の民間試験導入、日米貿易協定、災害、憲法などの諸課題について、与野党の政策責任者と議論しました。
■相次ぐ閣僚辞任
総辞職に値する
まず、菅原一秀経済産業相、河井克行法相の2人の閣僚が1週間に相次いで辞任する事態について問われました。任命責任を口にしながら、説明もしない安倍晋三首相について、自民党の新藤義孝政調会長代理は「(首相は)責任を常に自覚しているという意味で日頃からの考えを述べた。責任のとり方はいろいろある」などとかばいました。
野党側は「任命責任が空疎になっている」(立憲民主党の逢坂誠二政調会長)、「任命責任は重い。予算委員会でしっかり説明を」(国民民主党の後藤祐一政調会長代行)と批判しました。
笠井氏は「内閣総辞職に値する異常事態だ」と述べ、事実を徹底調査して真相を解明する責任が首相にあると強調しました。
その上で「安倍政権のモラル崩壊は底なしだ」と述べ、その根本に首相自らの「森友・加計」疑惑をきっかけにしたウソと改ざん、忖度(そんたく)の横行と、憲法解釈を勝手に変えた安保法制の強行があると指摘。6、8日に行われる衆参の予算委員会では、閣僚辞任問題の徹底解明とあわせて安倍政権が進めてきた政治そのものが根本的に問われるとして、暮らし、平和、格差拡大などの問題で「安倍政治を徹底的にただしていく」と表明しました。
■英語民間試験中止
高校生の声実る
大学入試への英語の民間試験の2020年度導入が延期されたことについて、笠井氏は「導入延期は高校生や受験生をはじめとして国民のみなさんの声と野党の結束した力が実ったものだ」と強調しました。試験をめぐり経済力や居住地による格差が生じるなど公平・公正でないという強い懸念が関係者、受験生から噴出してきたと述べ、「進路や人生を左右する入試で格差を当然視するのはおかしい。延期ではなく中止をというのが高校生たちの声だ」として民間試験導入をやめるよう主張。また、「身の丈」発言など憲法で規定された教育の機会均等を真っ向から否定する萩生田光一文科相の辞任を強く求めました。
新藤氏は、「話す、書くなど英語を身につける努力の結果を大学入試にも反映させようという議論の積み上げがあった」として導入に固執する姿勢を示しました。公明党の石田祝稔政調会長も「方向性は間違っていないが、制度設計に丁寧さが必要だった」と語りました。
これを受け、司会者が英語の民間試験がどうあるべきと考えるかと各党に問いました。
後藤氏は「白紙からやり直すべきだ」、逢坂氏は「民間に任せることは大きな問題。試験をつくる側と試験対策をする参考書を出す人が一緒になると利益相反もある」と導入撤回を訴えました。
笠井氏は「採算が最優先の民間任せにしたのが根本的に間違いだ。英語を書く、話すという能力を身につけることは教育の課題であり、それを試験で身につけさせようとする発想そのものが間違い。入試と教育をどうするかを真剣に見直すときだ」と主張しました。
■日米貿易協定
日本農業に打撃
国会で審議入りした日米貿易協定について笠井氏は、「政府が詳しい試算を出さないのは日本農業への大打撃が明らかになるからではないか」と批判。貿易協定には米国への特恵的待遇と再交渉規定があり、米国からコメの無税輸入枠の設定など、さらなる市場開放を迫られることになる危険を指摘し、「農業主権、経済主権を破壊する協定の国会承認は認められない。日米自由貿易協定(FTA)交渉は直ちに中止すべきだ」と求めました。
新藤氏は貿易協定について「高く評価している」と述べました。これに対し、逢坂氏は「日本の一方的譲歩としかみえない」、後藤氏は「自動車関税撤廃をとる(農産品の市場開放の)カードを先にきってしまったことが最大の問題だ」と批判しました。
■台風災害被害
生活再建支援を
台風による水害など相次ぐ災害にどう対応していくか―。笠井氏は、今後、国土保全や気候変動対策などが必要だとした上で、まず緊急対策として▽避難所の生活改善、安心して住める場所の確保▽災害ごみの撤去と消毒▽農林水産業者の経営再建と再開までの収入補てん、中小企業・中規模事業者へのグループ補助金などの直接支援▽被災者生活再建支援法の改正による支援金の最大300万円から500万円への引き上げと対象拡大を挙げて早急な対応を求めました。
笠井氏は、「政治の仕事として被災者が生活再建できる展望を持てる社会にしなければならない」と強調しました。
逢坂氏は、「小泉政権以降の公務員削減で自治体職員の数が十分でなく、防災力が低下している」と指摘。後藤氏は「(災害支援の)補正予算を臨時国会で通すべきだ」と訴えました。
■憲法改定議論
審査会動かすな
憲法改定議論にどう対応していくか―。笠井氏は「こんな安倍内閣に改憲議論をする資格はない」と断じ、「いま議論すべきは憲法を踏みにじっている安倍政治の現実だ」と指摘しました。
そして、芸術祭「あいちトリエンナーレ」への補助金不交付など表現の自由をめぐる問題など「憲法との関係で基本的人権をじゅうりんしている実態こそ首相出席のもと予算委員会などで議論すべきだ」と強調。参院選の結果でも国民は性急な改憲を望んでおらず、改憲原案をつくる憲法審査会は動かすべきではないとし、首相が狙う9条改憲も必要ないと力説しました。
日本維新の会の浅田均政調会長は「憲法審査会でいかに政権が憲法から逸脱したものか指摘すればいい」と述べたのに対し、笠井氏は「憲法審査会に総理は来ない」と反論しました。