2019年12月5日(木)
主張
日米協定承認可決
国民無視した強行を糾弾する
日本の農畜産物やデジタル貿易の市場をアメリカに開放する日米貿易協定とデジタル貿易協定の承認案が、4日の参院本会議で自民・公明の与党などの賛成多数で可決され、成立しました。二つの協定承認案が参院に送られてから、わずか10日余りしかたっていません。しかも日本共産党など野党がこの間、繰り返し追及してきたのに、協定実施による国内経済や農畜産業への影響試算はいまだに提出されていません。国会の審議を軽視し、採決を強行した安倍晋三政権の暴挙は許されません。
トランプ氏の手柄にする
二つの協定の承認案の審議は、10月末の衆院本会議で始まったものの、菅原一秀前経済産業相や河井克行前法相の辞任があったため、実質的な審議入りが遅れ、衆院でもわずか数回の委員会だけで可決されました。11月20日の参院本会議で始まった参院の審議も、まだ数回の委員会審議しか行われていません。安倍政権がしゃにむに協定の承認を急いだのは、来年のアメリカ大統領選に向け、トランプ大統領の手柄にする思惑からです。二つの協定は、来年1月に発効する見通しです。
もともと貿易協定をはじめとする日米協議は、トランプ米大統領がアメリカに有利な協定を日本に押し付けるために始まったものです。トランプ大統領が就任直後、12カ国でつくる環太平洋連携協定(TPP)から離脱表明したため、日本への農畜産物などの輸出でオーストラリアやニュージーランドなどに比べ不利になったとの不満が米国内で噴出したためです。
協議の開始からわずか半年足らずの交渉でまとまった二つの協定は危惧された通り、アメリカに牛・豚肉や乳製品などの日本への輸出拡大を認め、日本が要求した自動車や部品の関税撤廃は「さらに交渉」としかしていません。日本に一方的に不利な内容です。
国会審議では日本共産党など野党が繰り返し迫った、二つの協定実施による国内経済や農畜産業への影響試算については、安倍政権は不十分な「暫定値」や「暫定試算」しか出しませんでした。専門家などの検証を経た正式の影響試算は年末になるといいます。協定実施による国内対策も、「本年秋を目途に」と10月1日に決めたのに、いまだに示されていません。文字通り、審議の前提がないままで承認案採決を強行した“売国”的な協定そのものです。
アメリカ国内では、日本が大幅に譲歩した今回の協定でさえ、「不十分」だという声が出ています。20日に開かれた米下院歳入委員会の通商小委員会の公聴会では、より包括的な協定をにらんだ今後の交渉では、コメや一部乳製品を対象にすることや、通貨安誘導を防ぐ規定などを扱うよう求める声が相次いだといいます。今回の協定を発効させ、今後も交渉を続けることは、まさに際限のない対米譲歩になる危険があります。
経済・食料主権守ろう
日本国内では、今回の協定で日本の農畜産業などが大きな打撃を受けることへの不安と懸念が強まっています。そうした声を聞かずに協定承認案の採決を強行した安倍政権の責任は重大です。
今後の日米交渉での新たな譲歩を許さないことをはじめ、日本の経済主権・食料主権を守ることが重要です。