2019年12月21日(土)
主張
20年度予算案決定
財政のゆがみ拡大許されない
安倍晋三内閣が2020年度の政府予算案を閣議決定しました。一般会計の総額は102兆6580億円となり、過去最大を更新しました。13日に決定した19年度補正予算案と合わせると、「15カ月予算」の総額は一般会計で106兆円に迫ります。安倍首相の政権復帰以来増え続けてきた軍事費は、過去最大の5兆3133億円となりました。F35B戦闘機の導入費用を盛り込むなど、兵器“爆買い”の予算となっています。一方、社会保障費は高齢化などに伴う自然増分を約1200億円カットする国民に冷たい予算です。
消費税が最大の税目に
19年度の補正と20年度当初の二つの予算案は年明けの通常国会に提出されて審議されます。財政は国民の「血税」を使って景気を調整したり所得を再分配したりするもので、国民の暮らしへの応援を最優先させるべきものです。巨額の「15カ月予算」も、10月からの消費税率の引き上げや海外経済の低迷で景気の悪化が鮮明になり、安倍政権も景気を下支えするとして新たな「経済対策」を打ち出さざるをえなくなったためです。
消費税を増税したことで、20年度の消費税収は過去最大の22兆円に迫る見込みで、これまで最大の税目だった所得税を上回ります。国民にこれほど大きな負担を押し付けながら、軍拡や大企業向けの予算を優先し、国民向けの社会保障の予算を圧縮するというのは、文字通りの“逆立ち”財政です。しかも国の借金である国債の発行は、19年度補正予算案での2兆円余りの「赤字国債」の発行を含め、二つの予算案で37兆円に迫り、そのツケは結局、国民に回されます。20年度末の国債発行額の合計は、900兆円を超す見通しです。
20年度予算案での軍事費の増額は、安倍首相の政権復帰から8年連続です。新たにアメリカから最新鋭のF35B戦闘機6機(793億円)を取得するなど兵器の“爆買い”や「いずも」型護衛艦の空母への改修費などが盛り込まれています。沖縄の米軍辺野古新基地の建設費の増額も重大です。
安倍政権が景気の先行き不安に対処すると打ち出した「経済対策」も、消費税増税と合わせて実施したキャッシュレス決済のポイント還元や、マイナンバーカード保有者へのポイント付与を9月から実施することなどが中心です。税制でも、主に大企業をうるおす「オープンイノベーション税制」の創設が盛り込まれています。
こうした一方、国民の暮らしに直接かかわる社会保障予算は、高齢化などに伴う増額分が厚生労働省の概算要求の5300億円から4111億円に圧縮されました。年金は「マクロ経済スライド」で実質削減です。介護、医療も一層改悪する方針です。国民にとって、増税と社会保障改悪の二重苦、三重苦になる予算案です。
福祉と暮らしに予算を
安倍政権の下での財政のゆがみは、19年度補正と20年度当初の二つの予算案でいよいよ顕著です。本来、国民の負担能力に応じた「応能負担」の原則で税金を集め、国民のために使うべき財政を、軍拡や大企業・大資産家中心に使うのは本末転倒です。
軍拡・大企業優先の財政をやめ、消費税を緊急に5%に戻し、大企業と富裕層に適切な負担を求め暮らしに予算を回すべきです。