2019年12月26日(木)
政治考
安倍政権7年
私物化極まる「桜」疑惑
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2012年12月末の総選挙で安倍政権が復帰してから26日で丸7年。安倍晋三首相の在任日数は憲政史上最長を更新中ですが、首相主催の「桜を見る会」私物化疑惑が深まり、安倍首相の求心力は急速に低下しています。この中で、野党が安倍政権に代わる連合政権づくりへの話し合いを始めることがいっそう重要となっています。
民主主義無視
世論調査で、安倍内閣支持率が急落し、不支持が支持を逆転しはじめ、政権内では、桜を見る会疑惑が直撃したと衝撃が走っています。
「公文書の適切な管理は、民主主義を支える基盤だという考えがまったく無視されている。これが安倍政権の致命的な欠陥だ」。こう指摘するのは、独協大学の右崎正博名誉教授です。
右崎氏は、安倍政権が来年の桜を見る会を中止し、招待基準などを検証するとしている点についても、「見直しの元となる招待者名簿を廃棄しておいて、どうやって検証するのか」と批判。行政の公正性を覆す事態が安倍政権のもとで続出する原因として、官邸による官僚統制の仕組みをあげ、「国民ではなく、官邸の方ばかりに目を向ける官僚が増えてきてしまった。招待者名簿の廃棄は、その弊害がモロにあらわれたものだと思う」と述べました。
与党が首相出席の予算委員会開催を拒否し続けていることにも批判が強まっています。駒沢大学の大山礼子教授は「与党も本来は、議会人であるはずだ。議会人感覚が『ゼロ』であってはいけない。与党が安倍首相を隠すために一生懸命になればなるほど、議会人としての国民の信頼を失う」と指摘。「憲法を持つ国として当たり前すぎることが壊されている」と危機感をあらわにしました。
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結束する野党
一方、野党は、安倍政権によって壊された民主主義の基盤を立て直そうと「『桜を見る会』追及本部」を結成。真相究明に一体で取り組んできました。
立憲民主党の関係者の一人は「今度の国会で野党共闘の局面も変わった」と指摘。疑惑追及の突破口を開いた日本共産党の参加について、「共産党の調査力、組織力、歴史と継続性の力を無視できないし、求めざるを得なくなった。実際に、一体的追及の力が証明された」と語ります。
安倍政権に代わる政権の姿 今こそ
安倍政権は、特定秘密保護法や「共謀罪」法をはじめ、違憲立法を次々と強行。戦争法=安保法制を強行し、立憲主義を破壊してきました。安倍政権のもとで壊された民主主義・立憲主義・平和主義を回復させるためにも、野党が結束して安倍政権に代わりうる野党連合政権の姿を有権者に示せるかどうかが今、試されています。
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新たな局面に
安倍政権が強行した戦争法に反対する市民の声に呼応して、日本共産党の志位和夫委員長が「戦争法廃止の国民連合政府」を提唱したのが2015年9月。それから4年間、野党は16年の参院選、17年の総選挙、そして19年の参院選と3回の国政選挙を共闘の力でたたかい、大きな前進を果たしてきました。
その前進は、全国の首長選挙でも力を発揮しています。今年に入っては、埼玉県知事選に続き、岩手県知事選でも、野党が統一候補を立てて、与党候補を追い詰め、勝利するたたかいを展開。高知県知事選では、日本共産党の松本顕治氏が野党統一候補となり、大健闘するなど、野党共闘は新たな局面に入りつつあります。
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元自民党で建設相だった中村喜四郎衆院議員(無所属)は、松本氏の勝利をめざす総決起集会(11月2日)に駆けつけ、こうあいさつしました。「新潟県では社民党の人をみんなで担いだ。岩手県では自由党の人を担いだ。埼玉県では民主党の人を担いだ。高知県では共産党の人を担ぐ。『共産党だから駄目だ』とか、『共産党は応援できない』という考え方を持っていたから自民党が強い時代が今まで続いてしまった」「共産党が勝ったら奇跡が起こる。この奇跡を今後の総選挙、参院選につなげていこう」
実際、高知県知事選では、「オール野党」でたたかう体制がつくられ、全国から野党各党の党首をはじめ55人を超える国会議員が応援に来県。共産党の候補を野党が一致して支援する取り組みが生まれました。
前進積み重ね
ただ、野党が総選挙で、「政治を変える」決意の本気度を有権者に示すためには、連合政権づくりへの話し合いを始めることが不可欠です。
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早稲田大学の小原隆治教授は、野党候補が小選挙区で勝ち抜くためには、野党間での本格的な選挙協力が必要だとして、「選挙協力をさらにすすめるには同時並行して税財政含め連合政権の協議に正面から取り組むしかないし、連合政権の協議なしに安倍政権は倒せない」と指摘します。
日本共産党の志位和夫委員長は今年8月の党創立97周年記念講演会で、野党連合政権に向けた話し合いの開始を呼びかけ。これまでに立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の玉木雄一郎代表、社民党の又市征治党首、れいわ新選組の山本太郎代表と会談してきました。
12月15日に会談した枝野氏とは、「安倍政権を倒し、政権を代え、立憲主義を取り戻す」と確認するなど、野党連合政権の実現へ向け、一歩一歩重要な前進を積み上げています。
改憲への執念
一方、安倍晋三首相は、自民党総裁任期が21年9月に迫るなか、改憲論議がまったく進まないことへの焦りを募らせています。
安倍首相は、臨時国会閉会を受けての記者会見(9日)で、「憲法改正というのは、決してたやすい道ではないが、必ずや、私自身の手でなし遂げたい」と述べ、改憲への執念を強くアピール。
こうした安倍首相の動きについて、独協大学の右崎正博名誉教授は「安倍首相が改憲の旗を降ろしたら、安倍政権は一気に倒れる。だから、安倍首相は改憲の旗を降ろすわけにはいかないのだろうが、改憲を政権の延命のために利用するなど到底許されない」と指摘します。
消費税10%増税強行で消費不況は深刻さを増すなか、「経済最優先」も「アベノミクス」も国民的に完全に色あせています。「外交の安倍」の押し出しも、米ロ中への3方向の屈従外交の連続で全く説得力を失っています。安倍首相にとって、改憲だけが「アピール」できるスローガンになっているのです。
右崎氏は「改憲問題にケリをつけるためにも、『安倍政権にノー』の声を突き付けて、政権交代をはかることが必要だ」と強調します。行き詰まる安倍自民党政治を転換するためには、野党共闘が政局を主導する力を示すことが決定的な意味を持つ局面がやってきています。(佐藤高志、日隈広志)
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