2020年1月7日(火)
改憲原案策定に言及
首相年頭会見 緊迫中東へ派兵
安倍晋三首相は6日、三重県伊勢市で年頭記者会見を行い、米軍によるイラン要人の殺害で中東情勢が緊迫するなか、「情報収集体制を強化するため、この地域に自衛隊を派遣する」と改めて表明しました。世界が「新たな湾岸戦争」(グテレス国連事務総長)などと危機感を強めるなか、トランプ米大統領の「有志連合」の呼びかけに事実上応じる“派兵ありき”の姿勢を示したものです。
他方で、トランプ氏の指示で行われたバグダッド空港の空爆とイラン革命防衛隊・ソレイマニ司令官らの殺害には直接言及せず、「現状を深く憂慮している」「全ての関係者に緊張緩和のための外交努力を求める」と述べるにとどまりました。
記者からは「桜を見る会」をめぐり、マルチ商法大手ジャパンライフの元会長が招待され同社の宣伝に利用されていた問題を指摘されたものの、個人情報保護を盾に「招待されたかどうかも含め、回答を控えている」と、昨年末までと同様に説明を拒否しました。
憲法改定については、記者から水を向けられ「私自身の手で成し遂げていく考えには全く揺らぎはない」と強調。「先の参院選や最近の世論調査をみても、国民の声は改憲議論を前に進めよということだ」「国会議員として、改憲に対する国民的意識の高まりを無視することはできない」とし、「通常国会の憲法審査会で与野党の枠を超えて活発な議論を続け、憲法改正原案の策定を加速させたい」と述べました。
高齢者に就労と負担増を求める
首相「全世代型」で
「全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革していく。これが本年、内閣の最大のチャレンジだ」。安倍晋三首相は6日の年頭会見でこう語りました。
首相は会見で、2022年には、人口の多い「団塊の世代」が75歳以上になり始めると指摘。「このままでは若い世代の社会保障負担が大きく上昇する」と世代間の対立をあおり、より多くの高齢者に、就労の継続や負担増で「社会保障の支え手になっていただく」と求めました。
首相はこの方針を、「高齢者の8割が65歳以上になっても働きたいという意欲をもっている」と合理化。しかし、「8割」は、「現在仕事をしている者」に絞った再集計の数字で、元調査では、首相が「65歳を超えて働きたい」とみなした回答を選んだ人は55・3%にすぎません。そもそも日本の高齢者の比較的高い「就業意欲」の背景には、老後の生活への不安があります。
首相は現在原則1割となっている75歳以上の医療窓口負担への2割負担導入を念頭に「年齢にかかわらず一定以上の所得がある方には応分の負担をいただく」とも表明。大もうけをあげている大企業や富裕層には応分の税負担を求めずに、所得が高いとはいえない高齢者に窓口負担増を押し付ける考えを示しました。