2020年1月24日(金)
安倍内閣に国のかじ取り資格なし
志位委員長の代表質問 衆院本会議
23日の衆院本会議で代表質問に立った日本共産党の志位和夫委員長は、疑惑と汚職、景気とくらし、中東の緊張緩和と自衛隊派兵、ジェンダー平等で安倍首相の姿勢を追及。日本共産党の提案を示しながら、「共闘の力で、安倍政権を倒し、政権交代を実現し、新しい日本をつくるために全力をあげます」と決意を表明しました。
「桜」・カジノ汚職疑惑
首相はまともに答えず
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「『桜を見る会』の『サ』の字もなく、カジノ汚職の『カ』の字もない」―。志位氏は冒頭、安倍首相が施政方針演説(20日)で、「桜を見る会」疑惑、カジノ利権をめぐる自民党議員の逮捕、2閣僚の辞任に一切言及しなかったと指摘。「国民に進んで説明しようという意思がないのですか」と迫りました。
安倍首相は、「誠実に対応する」と言いながら、まともな説明はありませんでした。
「桜を見る会」の招待者で安倍事務所の推薦者の人数や、内閣官房と内閣府の判断で招待されなかった人数を追及。安倍首相は「招待されなかった例もあった」と言いながら、名簿の廃棄を理由に根拠も示さず人数を答えませんでした。ジャパンライフ会長の「推薦元」まで個人情報なのかと志位氏が問うても、「個人情報」だとして答弁しない始末でした。
2013~17年の「桜を見る会」の招待者名簿の廃棄にかかわって志位氏は、公文書管理法にもとづく行政文書管理ガイドラインは「事業の実績の合理的な後付けや検証に必要となる行政文書」について原則として1年以上の保存を義務付けていると指摘。19年の招待者名簿を「会の終了後、遅滞なく破棄」したとする政府の主張はガイドライン違反だと批判しました。
志位氏は「これらの事実は、国民の知的共有財産である公文書を、法律や規則を無視して破棄したとすることで組織的隠ぺいを図ったことを疑問の余地なく示している」と糾弾しました。
安倍首相は「ガイドラインにのっとった対応であり、組織的隠ぺいを図ったとの指摘は当たらない」と強弁しました。
志位氏は、カジノ汚職で「収賄等の不正行為を防止」(カジノ実施法の付帯決議)が守られなかったと指摘。「カジノ実施は中止すべきではありませんか」と迫りました。
安倍首相は「捜査中」を理由にまともに答えず、カジノ推進に固執しました。
消費税・社会保障
暮らし応援に転換こそ
昨年10月からの消費税10%への増税で、国民の暮らしと経済は痛めつけられています。家計消費は前年比で2カ月連続のマイナス。日銀の世論調査で個人の景況感は5年ぶりの低さ。実際に、売り上げ低迷や軽減税率に対応するための負担に耐えられず閉店する地域のスーパーがあります。
志位氏は、こうした暮らしと営業の実態を突きつけ、「消費税10%増税が日本経済に新たな不況をもたらし、中小企業を深刻な苦境の淵に追い込んでいる認識はあるのか」とただしました。
具体的な実態を示す質問に対し、安倍首相は「現時点では全体として前回(2014年の8%への増税時)ほどではないとみられている」と強弁。増税は「全世代型社会保障への転換のために必要だ」と合理化しました。
安倍首相は全世代型社会保障制度について「現役世代の負担上昇を抑える」「お年寄りも若者も安心できる」などと説明しています。しかし安倍政権は、▽原則1割の75歳以上の医療費窓口負担に2割負担を導入▽介護施設入所者の食費負担引き上げ▽年金は「マクロ経済スライド」で現在37~38歳が受給開始時まで続く給付削減―などを実施しようとしています。
志位氏は「全世代型社会保障の正体は、全世代を対象にした社会保障切り捨てではないか」と批判。安倍首相は「年齢ではなく、能力に応じた負担へと見直しを進める」と述べ、国民への負担押し付けを正当化しました。
志位氏は「日本共産党は消費税を緊急に5%に減税し、景気回復をはかることを強く求める」と表明。高すぎる国保料の大幅値下げや「減らない年金」の実現、ただちに時給1000円にして1500円をめざし全国一律の最低賃金制度の創設など、「消費税に頼らない別の道」で暮らし応援の政治に転換することを主張しました。
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中東情勢・自衛隊派兵
政権対応 三つの大問題
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米軍によるイラン司令官殺害で緊張が激化し、軍事衝突から戦争に発展する危険が依然続く中東情勢。志位氏が中東の緊張緩和に向けて外交的解決の道を提起したのに対し、安倍首相は米国にモノが言えず、追随しかできない姿勢をさらけ出しました。
志位氏は、自衛隊派兵など中東情勢に関する安倍政権の対応の三つの問題をただしました。第一は、安倍首相がイラン司令官殺害を一言も批判しないことです。志位氏は国連憲章違反の無法な軍事力行使を「是とするのか、非とするのか」と質問。安倍首相は「直接の当事者ではなく、詳細な事実関係を十分把握する立場にない」として評価を控えるとしながら、司令官殺害は「自衛権行使」との米国の主張は紹介しました。
第二は、米国とイランの軍事的緊張の根源となった、トランプ米政権のイラン核合意からの一方的離脱への対応です。志位氏は、イランには核合意の維持・履行を要請する一方でトランプ大統領には核合意への復帰を求めない安倍首相の態度を追及。安倍首相は、「トランプ大統領との間でも、イランの核問題が平和的に解決され、地域の平和と安定が確保されるよう真剣な議論を行う」としか言えませんでした。
第三は、トランプ大統領が呼びかけた対イラン「有志連合」に事実上応える形で、緊張が高まる中東沖へ自衛隊を派兵したことです。志位氏は、仮に米国とイランに軍事衝突が起きれば、米軍に情報を提供し共有する自衛隊が「米軍とともに戦争をすることになる」と警告。安倍首相は「自衛隊が何らかの武力紛争に巻き込まれるような危険があるとは考えていない」などと楽観視しました。
志位氏が、一連の対応はイランと米国の「橋渡し」ではなく、「米国の“お先棒かつぎ”そのものだ」と厳しく批判すると、安倍首相は「その指摘はあたらない」と気色ばみました。
志位氏は、中東地域の緊張緩和のためすべきことは自衛隊派兵ではなく、トランプ大統領にイラン核合意への復帰を説く外交努力だと迫りました。
ジェンダー平等
実現へ政治の責任問う
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「日本におけるジェンダー平等の遅れは、政治が大きな責任を負っている自覚がありますか」。志位氏は、19年のグローバル・ジェンダー・ギャップ指数で日本が過去最低の153カ国中121位となった事実を示し、安倍首相の認識をただしました。
安倍首相はジェンダー平等への認識の質問に答えず、「政治だけの課題と捉えるのではなく社会全体の意識改革を進める発想が不可欠」などと答弁。志位氏は「社会的・文化的に作られた性差」と定義されるジェンダーの多くが「政治によって作られたもの」と述べ、政治の責任を4点追及しました。
一つは、男女の賃金格差是正です。日本の賃金格差が35カ国中33位というOECD(経済協力開発機構)調査を示し、是正のため賃金格差状況の開示を企業に義務づけるべきだと要求。安倍首相は「求職者の誤解や混乱を招く恐れもある」などと拒否しました。
二つ目に志位氏は、民法を改正し「選択的夫婦別姓」と「同性婚」の実現を求めました。安倍首相は「慎重な対応を要する」などと、どちらも実施に背を向け、同性婚については憲法24条を持ち出し「現行憲法の下では同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されていない」などと強弁。
しかし、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」とした24条の趣旨は、戦前に戸主の同意が必要だった「家制度」の婚姻を、当事者の自由かつ平等な合意のみで成立すると明確化すること。「同性婚」を禁じたのではなく、異性・同性を問わず、すべての人に「婚姻の自由」を保障した条文です。
三つ目に志位氏は、刑法の強制性交等罪の「暴行・脅迫要件」を撤廃し同意要件を新設すべきだと強く訴えました。首相は、被害者などの意見を聞き「適切に対処してまいりたい」と答えました。
四つ目に、安倍政権のもと「セクハラ罪という罪はない」「LGBT(性的少数者)は生産性がない」など、ジェンダー平等に逆行する発言が繰り返される問題を追及。自民党改憲案が個人でなく家族を社会の基礎的単位と位置づけたように、「男尊女卑に貫かれた戦前の『家制度』への逆行の思想が根底にあるのでは」とただしましたが、安倍首相は「改憲案は個人と家族とを対比して考えようとするものではない」などとごまかしました。
志位氏は最後に、ジェンダー平等社会の実現をめざし「学び、自己改革をはかり、他の野党のみなさんとともに、力を尽くす」と表明しました。