2020年1月24日(金)
志位委員長の代表質問
衆院本会議
日本共産党の志位和夫委員長が23日の衆院本会議で行った安倍晋三首相に対する代表質問は次のとおりです。
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「桜を見る会」、カジノ汚職――総理の重大な責任を問う
総理の直接の責任が厳しく問われる問題――その自覚がないのか
私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。
総理、あなたの施政方針演説を聞いて、私が驚いたのは、「桜を見る会」の「サ」の字もなく、カジノ汚職の「カ」の字もなく、公職選挙法違反の疑惑で2人の閣僚が辞任した問題にも、一言も触れなかったことです。
これらはすべて、総理の直接の責任が厳しく問われる問題です。総理には、その自覚がないのですか。国民にすすんで説明しようという意思がないのですか。まず、お答えいただきたい。
血税を使った買収疑惑――事実上ノーチェックで招待されていたのではないか
具体的に聞きます。
「桜を見る会」疑惑で第一に問われるのは、総理が、国民の血税を使って、地元有権者を買収していたのではないかという疑惑です。
総理は、安倍事務所が「後援会の関係者を含め、…幅広く参加者を募り、推薦を行っていた」ことを認めたものの、招待者は最終的には内閣官房と内閣府で取りまとめを行っているので、公選法違反にあたらないと弁明しています。
ならば聞きます。安倍事務所が推薦した人は何人で、そのうち内閣官房と内閣府の判断で招待者にしなかった人は何人いるのですか。事実上ノーチェックで招待されていたのではありませんか。そうであれば、血税を使った買収そのものではありませんか。
悪徳商法の会長の招待――個人情報を盾に答弁を拒否することは成り立たない
第二は、悪徳商法で悪名をはせていたジャパンライフの山口会長を、総理自身の推薦で招待し、被害を広げた疑惑であります。
総理は、この問題を問われると、「招待者や推薦元については、個人情報なので、回答を控える」といいますが、なぜ「推薦元」まで開示できない個人情報なのか。また、山口会長自身が招待をされたことを自ら大々的に明らかにしている以上、個人情報を盾に答弁を拒否することは成り立たないではありませんか。
悪徳商法の会長を一体誰の責任で招待したのか。しかとお答えいただきたい。
公文書を法律や規則を無視して廃棄――最初から組織的隠蔽をはかったのではないか
第三は、2013年~17年の招待者名簿が、公文書管理法に違反して、行政文書ファイル管理簿にも記載せず、総理の同意手続きも行わないまま破棄されるという、違法行為が行われていたことを政府が認めたことについてです。
そうなりますと総理の昨年12月2日の「内閣府は定められた手続きにのっとって招待者名簿を廃棄している」とした国会答弁は、虚偽答弁だったということになるではありませんか。内閣府の責任者は総理大臣です。総理、あなたは違法行為の責任、虚偽答弁を行った責任を負っているとの自覚はありますか。お答えいただきたい。
さらに、政府が2019年の招待者名簿を、「会の終了後、遅滞なく破棄」したとしていることにも重大な問題があります。公文書管理法にもとづく行政文書管理ガイドラインは、森友問題などを踏まえ、「事業の実績の合理的な後付けや検証に必要となる行政文書」については、原則として1年以上の保存を義務づけているからです。「遅滞なく破棄」したなら、自ら決めたガイドライン違反ではありませんか。
これらのすべての事実は、安倍政権が当初から、国民の知的共有財産である公文書を法律や規則を無視して廃棄したとすることで、招待者名簿の組織的隠蔽(いんぺい)をはかっていることを疑問の余地なく示していると考えますが、いかがですか。明確な答弁を求めます。
カジノ汚職――総理の責任は重大、カジノ実施は中止すべきではないか
カジノ汚職にかかわっても、総理の責任はきわめて重大です。総理自身が成長戦略の「目玉」にすえたカジノをめぐって汚職事件が起こり、総理自身が任命したカジノ担当副大臣が、収賄疑惑で逮捕された。総理は、この責任をどう自覚しているのですか。
総理は、“事件とIRは別だ”として、カジノ実施への暴走をやめようとしません。しかし、国会で、カジノ実施法が強行されたさいの参議院の付帯決議では、「収賄等の不正行為を防止」することを国に義務づけています。この付帯決議が守れなかったのです。ならば、カジノ実施は中止すべきではありませんか。野党は共同で「カジノ廃止法案」を提出しました。それへの態度も含めて答弁を求めます。
消費税10%、全世代型社会保障大改悪を問う――家計応援の政策への転換を
消費税10%が新たな不況をもたらし、中小業者を苦境の淵に追い込んでいる
暮らしと経済について質問します。
消費税10%への増税が、新たな不況を引き起こしつつあります。家計消費は前年比で2カ月連続のマイナス、景気動向指数は4カ月連続の「悪化」、日銀の世論調査では個人の景況感が6期連続で悪化し、5年ぶりの低さに落ち込みました。
中小の商店は、増税による売り上げの減少にくわえて、大手店舗やポイント還元参加店に客を奪われ、複数税率で事務負担が増えるなど、三重苦、四重苦を押し付けられています。スーパーマーケットの倒産は、7年ぶりに前年比で増加に転じました。破産した高知市の幸町スーパーマーケットの店頭に掲示されたおわびの文書には、こう書かれていました。「軽減税率の実施に伴う新規レジ購入による負担や、電子マネーの普及により、想定していた以上に資金繰りが難しくなった」
総理、あなたが強行した消費税10%への増税が、日本経済に新たな不況をもたらし、中小業者を深刻な苦境の淵に追い込んでいるという認識はありますか。はっきりお答えください。
「全世代型社会保障」の正体は、全世代を対象にした社会保障切り捨てではないか
重大なことは、安倍政権が、「社会保障のため」といって消費税増税を強行しながら、その直後に、「全世代型社会保障」の名で、社会保障の全面的な切り捨てを進めることを、宣言したことです。
総理は、「若い世代の負担上昇を抑える」ために、高齢者に「ある程度のご負担をいただく」と言っています。しかし、実際にやろうとしていることはどんなことか。
政府は、75歳以上の医療費窓口負担に、2割負担――従来の2倍の負担を導入しようとしています。高齢になればなるほど複数の病気を抱え、治療にも時間がかかります。総理、あなたは、所得が少ない方に2割負担を押し付ければ、深刻な受診抑制を引き起こす危険があると考えませんか。
政府は、介護施設に入所する月収10万円~12・9万円の方々の食費負担を、月2万円引き上げる計画をうちだしています。介護・医療の関係団体からは、この負担増案が実行されれば、負担を苦にした施設からの退所や、入所断念が起こりかねないという、強い懸念が表明されています。総理、高齢者への負担増の押し付けは、高齢者の命と暮らしを壊すとともに、現役世代の負担増に直結し、「介護離職」に拍車をかけることになるという認識が、あなたにはないのですか。
年金では、「マクロ経済スライド」によって、現在37歳~38歳の人が年金を受け取り始める時まで給付削減を続け、基礎年金を現行より約3割、7兆円も削ろうとしています。その被害をもっとも受けるのは、若い世代ではありませんか。
結局、総理、あなたのいう「全世代型社会保障」の正体は、高齢者も、現役世代も、若い世代も、文字通り全世代を対象にした社会保障切り捨てではありませんか。
このような血も涙もない大改悪を、「現役世代のため」というウソをついて、高齢者と現役世代の間に対立と分断を持ち込んで、押し付けるなどというのは、まともな政治のやるべきことではないと考えますが、いかがでしょうか。
消費税を緊急に5%に減税し、社会保障を充実に切り替えることを求める
日本共産党は、消費税を緊急に5%に減税し、景気回復をはかることを強く求めます。
社会保障切り捨てをやめ、充実に切り替えることを強く求めます。全国知事会が提唱しているように、公費1兆円を投入して、高すぎる国保料を大幅に値下げするべきです。「マクロ経済スライド」を廃止し、「減らない年金」にするべきです。
中小企業支援とあわせて最低賃金をただちに全国どこでも時給1000円に引き上げ、1500円をめざし、全国一律の最低賃金制度を創設すべきではありませんか。すべての学生を対象に、授業料をすみやかに半分に値下げし、段階的に無償にすべきです。
日本共産党は、これらの施策のための財源を、富裕層と大企業優遇の不公平税制をただし、応分の負担を求めるとともに、トランプ大統領言いなりの米国製武器の「爆買い」をはじめ無駄遣いを一掃し、消費税に頼らない別の道でまかなう具体的な提案をしています。
以上の点について、総理の見解を問うものです。
中東における緊張激化と自衛隊派兵について――三つの大問題を問う
中東における緊張激化と自衛隊派兵について聞きます。
トランプ大統領の指示によって行われた、米軍によるイラン司令官殺害をきっかけに、中東の緊張が激化し、軍事衝突から戦争に発展する危険が依然として続いています。私は、安倍政権の対応には、三つの大問題があることを、指摘したいと思います。
第一は、総理が、米軍によるイラン司令官殺害に対して、一言も批判をのべていないことです。どんな理由であれ、主権国家の要人を空爆によって殺害する権利は、世界のどの国にも与えられていません。それは国連憲章に違反した無法な先制攻撃そのものです。総理は、米国の無法な軍事力行使を是とするのか、非とするのか、明確な答弁を求めます。
第二は、今日の米国とイランの軍事的緊張の根源は、2018年5月、トランプ政権がイラン核合意から一方的に離脱したことにあります。にもかかわらず、総理が、イランには核合意の維持・履行を要請しながら、トランプ大統領には核合意への復帰を求めないのは一体なぜなのですか。説明していただきたい。
第三は、中東の緊張が著しく高まっているにもかかわらず、トランプ大統領がよびかけた「有志連合」に事実上こたえる形で、中東沖への自衛隊派兵を進めていることです。政府は、自衛隊は米軍に情報を提供し共有するとしています。そうなりますと、かりに米国とイランに軍事衝突が起きれば、自衛隊は米軍とともに戦争をすることになるではありませんか。
こうした安倍政権の対応は、「橋渡し」などとは決して言えません。米国の「お先棒」かつぎそのものではありませんか。
日本船舶の安全のためにも、中東地域の緊張緩和のためにも、いま総理がなすべきは、自衛隊を出すことではない。トランプ大統領に対してイラン核合意への復帰を説く外交努力ではありませんか。見解を求めます。
ジェンダー平等――総理の基本認識、政治の責任を問う
日本におけるジェンダー平等の遅れ――政治が責任を負っているという自覚はあるか
最後にジェンダー平等について、総理の基本認識をただしたいと思います。
世界経済フォーラムが公表したグローバル・ジェンダー・ギャップ指数で、2019年、日本は153の国のうち、121位となり、過去最低を更新しました。総理は、この結果をどう受け止めていますか。恥ずかしい結果だという認識はありますか。
そのうえでお聞きしたいのは、そもそも総理が、ジェンダー平等という概念をどう理解しているかという問題です。
ジェンダーとは、社会が構成員に対して押し付ける「女性はこうあるべき、男性はこうあるべき」などの行動規範や役割分担などを指し、一般には、「社会的・文化的につくられた性差」と定義されています。しかし、それは決して自然にできたものでなく、その多くが政治によってつくられてきたものだと考えますが、総理はどのように認識していますか。
日本におけるジェンダー平等の遅れは、政治が大きな責任を負っているという自覚はありますか。答弁を求めます。
政治の責任について――四つの点について政府の対応と認識を問う
そのうえで、政治の責任について、具体的に4点について聞きます。
第一に、日本の男女の賃金格差は、OECD(経済協力開発機構)の調査では、正社員でも男性100に対して女性は75・5。OECD35の国のうち33位です。この是正のためにも、賃金格差の実態を見えるようにすること――すなわち企業が実態を情報公開することは第一歩になります。
ところが安倍政権は、昨年の女性活躍推進法改正で、男女の賃金格差状況の開示を義務づけることを、経団連の意向を受け入れて見送ってしまいました。これでいいのでしょうか。この態度をあらため、男女の賃金格差状況の開示を義務づけるべきではありませんか。
第二に、夫婦同姓を法律で強制している国は、世界で日本だけです。民法を改正して、選択的夫婦別姓を実現するべきではありませんか。同姓か別姓かを自由に選べるこの制度によって、不利益を被る人は誰もいないはずです。なぜ総理は、この制度の導入に賛成することをかたくなに拒むのか、説明していただきたい。あわせて同性婚を認める民法改正を行うべきではありませんか。答弁を求めます。
第三に、2017年の刑法改正は、性犯罪を非親告罪にするなど前進がありましたが、なお大きな問題点を抱えています。「同意のない」性交=強制性交であっても、被害者が拒否できないほどの「暴行・脅迫」があった、もしくは酒や薬、精神的支配などにより抵抗できない「抗拒不能」の状態であったことが認められなければ犯罪になりません。
強制性交等罪の「暴行・脅迫要件」を撤廃し、同意要件を新設すべきではありませんか。いま、性暴力根絶を求めるフラワーデモが全国に広がっていますが、この声に政治が応えるべきではありませんか。
第四に、総理は、安倍政権のもとで、「セクハラ罪という罪はない」、「LGBTは生産性がない」など、ジェンダー平等に逆行する発言が繰り返される原因はどこにあると認識していますか。自民党改憲案が「個人」でなく「家族」を「社会の基礎的単位」とあえて位置づけ直したことに象徴されるように、男尊女卑に貫かれた戦前の「家制度」への逆行の思想が、根底にあるのではありませんか。しっかりとお答えいただきたい。
ジェンダー平等社会をめざすとは、あらゆる分野で真の「男女平等」を求めるとともに、さらにすすんで、男性も、女性も、多様な性をもつ人々も、差別なく、平等に、尊厳をもち、自らの力を存分に発揮できるようになる社会をめざすということです。
日本共産党は、その実現をめざして、学び、自己改革をはかり、他の野党のみなさんとともに、力をつくす決意を表明するものです。
共闘の力で、政権交代を実現し、新しい日本を
安倍政権が発足して7年。政治モラルの崩壊、内政・外交の行き詰まりなど、安倍政権に、この国のかじ取りをする資格はもはやありません。
他の野党のみなさんとともに、野党共闘の力で、安倍政権を倒し、政権交代を実現し、新しい日本をつくるために全力をあげる決意をのべて、質問を終わります。