2020年2月9日(日)
アマゾン施設で賃金未払い
業務前後煩雑作業 労働時間から除外
インターネット通信販売大手の米アマゾン・ドット・コムの日本法人アマゾンジャパン(東京都目黒区)が運営する物流センターで、アマゾンが委託先の労働者に課している始業前と終業後の煩雑なセキュリティーチェックなどの時間が労働時間にカウントされず、大規模な賃金未払いが常態化している疑いのあることが、日本共産党の倉林明子参院議員と本紙の調べでわかりました。
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神奈川県小田原市にあるアマゾンジャパン最大の物流センター(開設時点で約20万平方メートル)では請負業者ワールドインテック(福岡市)やファイズオペレーションズ(大阪市)の下で多数の契約社員や派遣社員が働いています。これらの労働者は時間給で賃金を支払われています。勤務時間は朝8時始業~夕方17時終業、朝9時始業~夕方18時終業などです。
現・元社員らによれば、遅刻を避けるために労働者は始業時刻の30分程度前に物流センターに到着しなければなりません。盗難防止や労務管理の目的でアマゾンが課しているセキュリティーチェックや私物管理などの準備作業に20分前後を要するためです。平塚駅から労働者を移送するアマゾンの無料送迎バスは始業時刻の40分程度前に物流センターへ着きます。
物流センターに入った労働者は(1)1階の名簿で自分の名前にチェックを入れる(2)1階のロッカールームで持ち込み禁止の私物(スマートフォンなど)を預け、たすきを装着する(3)2階の「点呼表」に自分の健康状態を書き込む(4)2階で指紋を入力し生体認証を受ける(5)2階の「配置表」で自分の作業場所を確認し、自分の名前にチェックを入れる(6)自分の作業場所がある階で社員証のチェックを受け、作業に必要な機器を借りる―という煩雑な準備作業を求められます。(6)の社員証チェックを始業時刻の5分前までに済ますよう指示されています。
終業後には盗難防止のための手荷物検査を受けてから自分の私物をロッカーから取り出す必要があり、10分前後を要します。
これらの作業時間を請負業者は労働時間にカウントせず、賃金を支払っていません。その分、アマゾンが請負業者に支払う業務委託料が過少になっている疑いがあります。
本紙はアマゾンジャパン、インテック、ファイズの3社に賃金未払いの疑いについて質問しましたが、3社は回答しませんでした。
過去にさかのぼり支払いを
倉林明子議員の話
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厚生労働省が定めた「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月20日)は「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のこと」だと定義しています。そのうえで「使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間」は労働時間として扱わなければならないと定めています。
これに照らせば、アマゾンが委託先の労働者に課しているセキュリティーチェックや私物管理の時間が労働時間に当たるのは明白です。
また、労働時間を15分単位で切り捨てるセブンイレブン本社のシステムを日本共産党の辰巳孝太郎参院議員(当時)が批判した際、塩崎恭久厚労相(当時)は「労働時間は分単位で把握する必要がある。分単位で切り捨てることは原則として労働基準法違反になる」(16年3月28日の参院予算委員会)と答弁。セブンイレブンは賃金計算システムを是正しました。これに照らしても、労働時間の違法な切り捨てによってアマゾンが巨額の利益を得てきた疑いは濃厚です。
未払い賃金については過去にさかのぼって支払うべきです。1人1日30分の未払い賃金が生じていると仮定すると、月20日の勤務で10時間の未払いとなります。時給が1100円なら月1万1000円、年13万2000円です。さらに時間外勤務には割増賃金を払わなければなりません。小田原物流センターだけで数千人の労働者がおり、全国に20以上のアマゾンの物流施設があります。未払い賃金の総額は膨大な額にのぼる可能性があります。