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2020年3月10日(火)

悪あがきの楽天

出店者にアメとムチ

送料「無料」拒めば報復

 インターネット通販サイト「楽天市場」を運営する楽天は3980円以上の買い物で送料を一律「無料」にする計画を延期しました。一律「無料」化に反対する出店者らの運動に追い込まれた形です。一方で楽天に従う出店者にはアメを、従わない出店者にはムチを与え、無理やり送料「無料」化に追い込む措置を打ち出しています。「卑劣な悪あがき」が出店者らのさらなる怒りを買っています。

「選択制」の元で

 楽天は6日、送料一律「無料」化を18日から実施するという当初の方針を転換しました。「無料」化を出店者の選択制にし、対応可能な出店者だけで18日から実施すると表明しました。公正取引委員会が東京地裁に申し立てた一律「無料」化の緊急停止命令を回避する狙いです。

 他方、楽天はあくまでも一律「無料」化に固執し、「無料」化を選ぶ出店者への優遇措置を打ち出しています。それは同時に「無料」化を拒否する出店者への事実上の報復措置になっています。(表)

 一つは、18日から楽天市場のトップページに新たな商品検索コーナー(特設サーチ)を設けるという措置です。送料「無料」化を実施した店舗の商品だけを検索することができるコーナーです。

 これが活用されれば、「無料」化を実施しない店舗の商品は最初から消費者の選択肢に入らなくなります。消費者獲得競争において、楽天に従う出店者を有利にし、従わない出店者を圧倒的に不利にする仕組みです。

 もう一つは、「無料」化で生じた損失を補てんするために楽天が支援金を出すという措置(安心サポートプログラム)です。

 「利益額」と「送料差額」を勘案して支援額を決めるといいます。「無料」化で出店者が送料を負担し、利益が減った場合に支援金が出るとみられます。つまり、「無料」化を選んだ出店者だけが楽天の支援金を利用して商品価格を下げられるということです。価格競争において、楽天に従う出店者を有利にし、従わない出店者を不利にする仕組みです。

 報復措置はほかにも用意されています。

 まず「無料」化を拒否するためには申請手続きが必要です。18日までの短期間に「商品単位」で新たに送料を設定し直さなければなりません。膨大な作業の強要です。楽天で1万点前後の商品を売る出店者は「あまりに非現実的だ」と憤ります。配送方法の選択肢も狭められます。送料「無料」化から除外した商品はコンビニやロッカー、店頭、郵便局で受け取れなくなります。

優越的地位乱用

 楽天側の発表に対してコメントを投稿できる出店者専用の掲示板は、怒りの声で埋め尽くされました。

 「実質のところ『強制導入』ですよね」「たった一人の思いつき発言でどれほどの人が振り回されているのでしょう」「自ら楽天市場のイメージを落とし、店舗を振り回して運営の邪魔をして。一体、何がしたいんですか」

 インターネット上で消費者と事業者を結び付けて市場を形成するプラットフォーマーが身勝手な差別を行って一部の事業者だけに不利益を強いるなら、独占禁止法の目的である「公正かつ自由な競争」が侵害されることは明らかです。愛知県の出店者は話します。

 「自分の意向に従わない店舗を徹底的に不利にして競争で淘汰(とうた)しようというやり方は卑劣極まりない。優越的地位の乱用以外の何ものでもありません。売り上げの多くを楽天に頼る店にとっては死活問題です。悪あがきはやめてほしい」

 (杉本恒如)

送料「無料」化を拒む店舗への楽天の報復措置

・新設する商品検索コーナー(特設サーチ)から排除

・商品ページに「3980円送料無料ライン対象外」と表記

・支援金(安心サポートプログラム)の対象から排除

・商品ごとの送料設定のやり直しを強要

・コンビニやロッカーなどでの商品受け取りを消費者の選択肢から排除


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