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2020年3月18日(水)

主張

日銀の追加緩和

株価対策で経済は改善しない

 新型コロナウイルス感染の拡大による金融市場の混乱に対し、日本銀行は16日、追加の金融緩和政策を決めました。米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)がゼロ金利政策に踏み切ったことを受けた措置ですが、主な中身は株価対策です。今、日銀が株価を下支えしても急減速する経済を改善する力にはなりません。

金融政策は既に手詰まり

 今回の日銀の決定では、アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)のもとで加速してきた株価指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れペースをさらに年12兆円に倍増します。大企業が発行するコマーシャルペーパー(CP)と社債の追加買い入れ枠を計2兆円設け、大量に購入します。

 ETFは株式で構成される投資信託であり、ETFの購入は株式市場への資金投入です。いまや日銀はETFの最大の買い手となっています。公的年金の積立金と合わせ、安倍政権の株価つり上げ政策によって株式市場に投入された公的マネーは市場の時価総額の10%以上にのぼっています。公的マネーが株高を演出する異常事態です。公的マネーが筆頭株主になっている上場企業もあります。日銀のETF買い増しによって市場のゆがみがさらに拡大することになります。

 しかも株価が下落する中でETFの買い入れを増やせば、日銀が保有する29兆円(3月10日、営業毎旬報告)のETFの含み損が増えることになります。日銀によると、日経平均株価が1万9500円を下回れば、保有するETFの時価が簿価を下回ります。日経平均の終値は17日時点で1万7011円です。すでに含み益は消滅しており、財務の悪化が懸念されます。

 新型コロナウイルス感染の拡大による経済の減速の原因は、人やモノの流れが止まり、経済活動に急ブレーキがかかったためです。お金が足りないことが原因ではありません。

 日銀は「企業金融の円滑確保」のためと言いますが、日銀が7年近く続けてきた大規模な金融緩和で金融市場にはお金が余っています。民間金融機関が日銀に預けた当座預金の残高は約400兆円と、大規模緩和を発動する前の7倍に膨れ上がっています。日銀が銀行に資金供給を増やしても、企業や個人への貸し出しに回らず、日銀内の預金口座にたまっている状態です。

 日銀の金融政策による金利の調整については、日銀当座預金にマイナス金利が導入され、これ以上金利を引き下げる余地がありません。日銀の金融政策はすでに手詰まりに陥っています。金融緩和を株価つり上げの手段に使ってきた安倍政権と黒田東彦総裁下の日銀の責任は重大です。

暮らし、内需支援こそ

 日銀が資金供給を増やしても経済活動にお金が使われないのは、安倍政権のもとで2度にわたる消費税増税によって個人消費が停滞し、企業の設備投資も伸び悩んでいるからです。そこを直撃したのが新型コロナウイルスの感染拡大です。

 今起きているのは実体経済の深刻な後退の危機です。国民の暮らしを防衛するとともに、消費税率を5%に引き下げることをはじめ内需、家計、中小企業の支援に力を集中することが政治の役割です。


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