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2020年3月23日(月)

主張

農業の基本計画案

「安倍農政」の転換が不可欠

 農林水産省が、10年後の食料自給率の目標や農政の基本施策を定める「食料・農業・農村基本計画」の案を示しました。同計画は、食料・農業・農村基本法に基づき5年ごとに決めるもので、食料・農業・農村政策審議会の議論を経て3月中に閣議決定の予定です。

 農業の担い手が減り、高齢化も加速し、主要国で最低の食料自給率の低下に歯止めがかからない中、危機的事態をどう打開するのか。日本の農政が問われています。

目標との乖離は広がる

 案では、基本計画の最大の柱の一つである食料自給率の2030年の達成目標について、現行計画(25年目標)と同じ45%(カロリーベース)としています。

 安倍晋三政権の下で策定された現行の計画は、それ以前の50%が高すぎたとして“達成可能”な目標に引き下げたものです。しかし、現実はそれに近づくどころか低迷を続け、18年には37%と過去最低を記録しました。自給率向上の目標は過去4回の計画策定のたびに掲げられましたが、目標と現実の乖離(かいり)は広がるばかりでした。

 新たな計画を定めるにあたっては、なによりも、この事態を招いた歴代政府の農政をしっかり検証し、根本からの転換が不可欠です。ところが案には、まともな分析は見られません。

 それどころか「TPP(環太平洋連携協定)11、日EU・EPA(経済連携協定)及び日米貿易協定により、我が国は、名実ともに新たな国際環境に入った」として、農業へ甚大な打撃をもたらす農産物の輸入自由化路線を前提としています。空前の自由化を次々に強行し、農業が成り立つ基盤を狭めてきた政策をそのままにして、どんな目標を掲げても“絵にかいた餅”にしかなりません。

 案では、農業や農山村の危機的現実を反映して、中小の家族農業への支援、過疎化が進む中山間地域の振興、農業の多面的機能の発揮などについても、ある程度言及しています。これまでの大規模化や法人化、企業参入一辺倒の農政が行き詰まり、農村の現場から厳しい批判が出ていることへの一定の対応といえます。

 とはいえ、現在の計画下で進めてきた「改革」を「引き続き推進する」とも明記し、「競争力強化」「効率化」最優先の「農業の成長産業化」も強調しています。

 安倍政権の7年間は、「改革」と称して農地制度や農協法、種子法など家族農業や地域農業を支えてきた戦後農政の諸制度を解体する暴走の連続でした。輸入自由化のもとで「競争力」「効率」一辺倒の農政が押し付けられました。

 これらが家族農業を窮地に追い込み、農村の疲弊に拍車をかけたのは明白です。その「推進」を基本にしながら、中小農家の支援や中山間地の振興を唱えても、実効性があるのか、大いに疑問です。

現場の実態を踏まえよ

 安倍政権の農政は、食料・農業・農村基本法をないがしろにし、米国に追従し、大企業の利益を優先する立場から、官邸主導で農村に押し付けたものがほとんどです。

 食料自給率の向上、農村の振興といった基本法の理念を真剣に追求しようとするなら、「安倍農政」こそ根本から転換しなければなりません。農業者や消費者の声を反映し、農業と農村の実態を踏まえた農政こそ実現すべきです。


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