2020年4月10日(金)
宮城 新型コロナ 農家経営脅かす
和牛枝肉価格が低下
今のままでは大幅採算割れ
米の生産とともに肉・乳用牛や豚など畜産業が盛んな宮城県。新型コロナウイルスの影響で、外食などの需要が急激に減り、枝肉の価格低下が起こって農家経営を脅かしています。(中川亮)
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県畜産課によると、外食、歓送迎会など「自粛」に伴い、3月の和牛枝肉価格は加重平均で前月比で約10%下がりました。子牛1頭の価格も約10万円落ちたといいます。
宮城県の肉用牛の飼養頭数は約8万と全国6位です。2018年の県内畜産産出額で最も多いのが肉用牛(276億円)で、全体の4割近くを占めます。
肉用牛の生産量で「東北随一」「県内一」を誇る登米(とめ)市。JAみやぎ登米は「地域経済への影響は深刻です。宴会等が開かれないもとで国内消費もなかなか回復しないのではないか。今の状況が長引けば農家経営は厳しくなる」(総務部担当者)とみています。
「今の価格のままでは大幅に採算割れだ」。同市で約100頭の和牛を育てる男性(67)はこう嘆きます。3月の取引価格は1頭あたり平均で、前年比で約30万円下がり、出荷を見合わせています。
出荷の時期を迎えた10頭以上が、牛舎に残されたままです。肉がつき、丸みを帯びています。「このまま残しておくと肉質は落ちていく。体に重い負担がかかっているので、最悪の場合死んでしまうこともある」
市況の回復を待っていますが、「全く先が見えない。たとえ赤字でも売らざるを得なくなる」と嘆きます。「融資や損失補てんといった対策が必要」と強く求めます。「一番怖いのは、自分自身が感染して牛の世話ができなくなってしまうこと」と述べ、表情をこわばらせました。
父親の代から約40年続いてきた事業です。「ここでやめるわけにいかない」との思いでこの危機に立ち向かっています。
共産党県委など知事に支援要望
畜産農家への支援策について、日本共産党宮城県委員会コロナウイルス問題対策本部(ふなやま由美本部長)と党県議団(三浦一敏団長)は3月に県庁を訪れ、村井嘉浩知事に要望。収益と生産費の差額の9割を補填(ほてん)する「肉用牛肥育経営安定特別対策事業」(牛マルキン)の早期活用や、かつてのBSE(牛海綿状脳症)対応と同様の支援制度などを求めています。