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2020年4月17日(金)

主張

有害泡消火剤流出

米軍は立ち入り調査を認めよ

 沖縄県の米軍普天間基地(宜野湾市)から、有害な化学物質PFOSを含む泡消火剤が大量に基地の外に漏出し、大問題になっています。基地の外に流れ出た量は約14万3830リットル(200リットルのドラム缶約719本分)に及びます。沖縄県は以前から、基地周辺の湧き水などからPFOSが高濃度で検出されていたため、基地への立ち入り調査を求めてきました。しかし、米軍はかたくなに認めてきませんでした。そうした姿勢が、今回の事故を招いたのは明らかです。同時に、米軍の立ち入り拒否を事実上放置してきた日本政府の責任も厳しく問われます。

住宅街に飛散する事態に

 PFOSは有機フッ素化合物の一種で、発がん性など人の健康へのリスクが指摘されています。日本国内では使用・製造が原則禁止されています。

 今回の事故が発生したのは今月10日で、普天間基地の格納庫で消火システムが作動し、泡消火剤が水路を通って基地の外に流出したとされます。泡消火剤の漏出総量は22万7100リットルで、うち6割超が基地の外に流れ出ました。水路や河川に泡が滞留し、風にあおられて住宅街に飛散するなど、深刻な事態になりました。

 基地の外に流出した泡消火剤の除去作業を米軍が行わなかったことも強い怒りを呼んでいます。

 沖縄県ではこれまで、米軍嘉手納基地(嘉手納町、北谷町、沖縄市)や普天間基地の周辺河川や湧き水からPFOSなどの有機フッ素化合物が高濃度で検出されてきました。県は、基地で使用されている泡消火剤が原因ではないかとして、立ち入り調査を求めていました。

 昨年12月には、流出量は不明なものの、普天間基地でPFOSを含んだ泡消火剤が漏れ出す、今回と類似の事故も起こっています。日本政府は当時、普天間基地ではPFOSを使用しない製品への転換を進めていると説明していましたが、実態とは異なることが示されました。この時、立ち入り調査が認められていれば、今回の事故は防げた可能性もあります。

 日米両政府が2015年に締結した日米地位協定の環境補足協定は「環境に影響を及ぼす事故(すなわち、漏出)が現に発生した場合」の基地への立ち入り手続きを定めています。しかし、米軍からの通報が手続きの前提とされ、日本側(国や自治体)の「現地視察」要請に対し「妥当な考慮を払う」としているだけです。全て米軍の裁量任せです。

 基地周辺でのPFOS検出の原因を突き止めるために沖縄県が行った立ち入り要請に対しても、米軍は「環境補足協定に規定された環境に影響を及ぼす事項に該当するか慎重に検討する必要がある」などとし、拒否してきました。

治外法権的な特権なくせ

 今回の事故を受けて防衛省は初めて環境補足協定に基づき立ち入り調査を求めましたが、米軍は「すぐにはできない」との姿勢を示しているとされます。日本政府は毅然(きぜん)と抗議し、即刻立ち入りを認めるよう強く迫るべきです。

 立ち入り調査の最大の壁になっているのは、日米地位協定が米軍に基地の排他的管理権を認めていることです。地位協定を抜本改定し、米軍の治外法権的な特権を改めることが必要です。


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