2020年4月24日(金)
東京の救急医療 危機
搬送先決まらず 隊員足止め
新型コロナウイルスの新たな感染者が10日連続で100人を超えた東京都で救急医療体制が切迫しています。院内感染が発生するなどして救急外来を休止している医療機関もあり、患者の搬送先がなかなか決まらないケースが増加。医療機関側もコロナ対応に苦慮しています。(丹田智之)
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東京都救急災害医療課によると、救急搬送の際に5カ所以上の病院に断られたり、受け入れ先が20分以内に決まらなかったりしたケースは3月、前年同月比231件増の931件にのぼりました。
同課の久村信昌課長は「4月に入ってからは18日時点で1391件に達し、前年同時期344件の約4倍です。このうち6~7割が発熱や呼吸困難など新型コロナ感染が疑われる症状で、ベッドが満床の場合もあり、医療機関から受け入れを断られるケースが増えている」といいます。
東京消防庁は、都内の救急搬送の現状について「救急隊の現場滞在時間が長くなり、搬送先の病院が遠距離となる傾向がある」と説明します。救急隊員は出動の際に高性能マスクN95やゴーグルを装着。救急車内の隔壁の設置、搬送後の消毒など、感染防止対策を強化しています。こうした状況で救急隊員の多忙化も懸念されています。
「感染者を受け入れる施設の整備、臨時病院の設置を早めに行ってほしい」
「二次医療圏外からの肺炎患者の受け入れが増えた」
日本救急医学会が4月、全国の医師を対象に実施したアンケートでは深刻な実態が明らかになりました。
同学会と日本臨床救急医学会は9日に共同声明を発表。「救急医療体制の崩壊を実感している」と大きな危機感を示しています。
声明は、救急医療機関でコロナ疑い外来患者への対応の負担が増え、救急搬送が困難な事例の増加とともに「本来の重症救急患者の受け入れができなくなっている」と指摘。「特に心筋梗塞、脳卒中、多発外傷などの緊急を要する疾患において治療のタイミングを逸することが危惧される」と懸念しています。
東京都北区の王子生協病院(159床)では、17日に入院患者1人のコロナ感染が判明したことで救急外来と発熱外来を休止。濃厚接触者の担当医と病棟の半数の看護師が自宅待機となっています。
同病院の担当者は「職員が感染の疑いのある患者と接触し、健康観察のため出勤できなくなる状況がたびたび起きています。救急患者の受け入れができる体制ではない」と訴えています。