しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年5月22日(金)

主張

黒川氏と安倍政権

定年延長決めた責任問われる

 安倍晋三政権の違法な閣議決定によって定年が延長された黒川弘務・東京高検検事長が、新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が出されているさなか、賭けマージャンをしていたことが明らかになりました。辞任は当然ですが、訓告という甘い処分で幕引きにするわけにはいきません。安倍政権の責任は極めて重く、黒川氏の定年延長をなぜ決めたのか、徹底究明が必要です。

違法な閣議決定の究明を

 21日発売の『週刊文春』は、黒川氏が今月1日と13日、都内の産経新聞記者の自宅マンションを訪れ、同記者と別の産経記者、朝日新聞元記者の4人で賭けマージャンをしていた疑いを報じました。黒川氏は法務省の聴取に事実関係を認めました。

 不要不急の外出自粛が求められ、国会では自身の定年延長が発端となった検察庁法改定案をめぐり緊迫した状況になっているのに、「3密」の典型であるマージャンに熱中するというのは非常識にも程があります。しかも、賭けマージャンは刑法の賭博罪に問われます。検事長にとどまることが許されないのはもちろん、検事の資格さえありません。

 安倍政権は1月末、この黒川氏の定年を半年間延ばすことを、国家公務員法の定年延長規定を根拠に閣議決定しました。それまで検察官の定年が延長された例は一度もなく、前代未聞の人事でした。

 この閣議決定は、検察官の定年を検事総長は65歳、それ以外は63歳とし、その延長を認めていない現行の検察庁法に違反するものです。しかもそれは、政府が従来、検察官には国家公務員法の定年延長規定は適用されないとしてきた解釈を百八十度変えるものです。

 そうした違法な閣議決定の裏には、8月で退官予定とされる現職の検事総長に代え、黒川氏をその地位に就かせようという政権の思惑が指摘されてきました。黒川氏は、安倍政権下で法務省の官房長や事務次官を務め、国民の思想・良心の自由を侵害する共謀罪法の制定にも携わってきました。首相側近の菅義偉官房長官に近い人物だと報じられています。

 この間、安倍内閣の閣僚らによる疑惑・事件が相次いでいます。河井克行前法相・案里参院議員夫妻の公職選挙法違反疑惑、元内閣府副大臣の秋元司衆院議員らによるカジノ汚職などです。首相自身の「桜を見る会」疑惑でも、公選法や政治資金規正法違反の罪に当たると早くから指摘され、21日は弁護士や学者ら法律家約660人が刑事告発しました。

 黒川氏の定年延長は、政権の中枢に捜査の手が伸びないようにするためとの疑念は消えません。

検察庁法改定案の廃案を

 安倍首相はインターネット番組(15日)で、黒川氏の定年延長について「検察庁も含めて法務省がこういう考え方でいきたいという人事案を持ってきて、それをわれわれが承認をする」と述べています。しかし、検察庁法に違反し、政府の法解釈まで覆す人事を法務省が本当に提案したのか、真相の解明が求められます。

 今国会での成立が見送られた検察庁法改定案は検察人事への政治介入を可能にし、黒川氏の定年延長のような異常な事態を恒常化させるものです。改定案を廃案に追い込むことはますます重要です。


pageup