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2020年6月1日(月)

演劇緊急支援プロジェクトよびかけ

未曽有の危機 乗り越えたい

日本劇団協議会会長・演出家 西川信廣さんに聞く

 演劇関連3団体(日本劇団協議会・日本演出家協会・日本劇作家協会)が、政府からの支援や民間からの寄付などを呼びかけるネット上の署名活動「演劇は生きる力です。演劇緊急支援プロジェクト」を始めています。演劇、ライブハウス/クラブ、映画の3者がジャンルを超えて連携し、「文化芸術復興基金」創設をめざす省庁要請・会見も先日、行いました。日本劇団協議会の西川信廣会長に演劇界の現状と活動の展望について聞きました。(寺田忠生)


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にしかわ・のぶひろ 1949年生まれ。文学座所属。紀伊国屋演劇賞個人賞など受賞

 「自粛要請以降、文化庁に支援や赤字の補填(ほてん)を求めてきましたが、納得のいく回答を得られない状況が続いてきました。新型コロナとのたたかいは1年以上続く可能性もあるといわれています。すると、日本の演劇は本当になくなってしまう、死滅してしまうという危機感を感じています」と西川さん。

 「演劇関係の団体だけでもすぐに集まって声をあげよう、自分たちでできることがないか、あらゆる手立てを考え、みんなで演劇の未曽有の危機を乗り越えて、また劇場で会えるようにしようとよびかけました」

 「プロジェクト」のよびかけには、3団体だけでなく、日本俳優連合、日本舞台美術家協会、日本照明家協会、日本舞台監督協会、日本舞台音響家協会などの演劇に関わる幅広い団体が加わり、かつてない動きになっています。

創造活動の場維持するため

 「演劇は、密接、密集してやらなければならないことが多い様式です。みんな一緒になって息をする。もちろん、舞台を映像に撮って配信するという方法はありますけれども、演劇の強みは、みんな同じ空間に居て空気をともに共有する。そこに感動も生まれます。ところが今、それができない。10人出演する芝居を5人以下に減らしてやるわけにはいかないんです」

 劇団・興行団体も危機に直面していますが、俳優、劇作家、演出家、大道具、照明など「総合芸術といわれる演劇だからこその複合的な経済危機を迎えている」(署名の「よびかけ」)のが現状です。さらに各劇団で直面している大きな問題は、稽古場、事務所の維持だと言います。

 「公演に加えて、研究生に教えたり、ワークショップ(参加・体験講座)を開いたりして、なんとか稽古場・事務所を維持していますが、収入の道を全て断たれ、いま、家賃・固定費が払えない状況に追い込まれています。劇団として稽古場を持っているところはごく少数なので、いまのままでは創造活動をする場所が維持できません」

 「一方でアルバイト先もなく、生活の糧が何もないところに多くの演劇人が置かれています。私たちのような統括団体も、会費が入ってこなければ当然立ち行かないので、新型コロナが収束するまでに演劇全体が崩壊してしまいます」

新しい社会の要求にこたえ

 演劇緊急支援署名のよびかけで併せてアピールしているのは、これまで社会の中で果たしてきた演劇の役割です。「多様な作品を生み出し、芸術・娯楽として多くの人に楽しんでいただいてきたこと」と併せて「学校での公演、コミュニケーション教育、福祉施設での鑑賞会・朗読などの社会的な活動に地道に取り組んでいます」。

 「なかなか見えにくいけれども、地をはうような形で活動してきた劇団が各地にあります。社会の中に入って、多様な問題を演劇的な手法を使って援助・支援してきました。いま“アフター・コロナ”“ウィズ・コロナ”という言葉が言われ、新しい社会構造の必要性が強調されています。新しく変わっていく社会の中で演劇には必ず時代的社会的な要求にこたえる力があります。演劇の灯を絶やさないための幅広い声をよびかけたいと思います」

 *「演劇緊急支援プロジェクト」署名では、▽「文化芸術復興基金」を立ち上げ資金援助、助成をする▽緊急措置的な寄付の受け入れ、寄付金の国の税制上の優遇措置▽公的助成、委託事業については中止になった場合でも経費の支援を行う▽学校での演劇鑑賞事業の上演中止では予定収入の全額補償ができるよう制度設計する―などを要望しています。


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