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2020年6月1日(月)

大学でオンライン講義

画面越し 戸惑いと孤独

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、大学でオンライン講義が始まりました。4月からキャンパスに1回も入っていない新入生も。いま何してる? どんな思い? 教員にも聞いてみました。=学生は仮名= (染矢ゆう子)


新入生は

課題が終わらない!?

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(写真)オンライン講義を聞く私立大学の1年生=5月27日、東京都内

 4月から入構禁止が続く東京大学。1年生の凌太さんは3月末に学生証を受け取りに行って以来、キャンパスに入れません。実家は岐阜県。祖父母が同居しており、感染を防ぐために帰省できないまま1人暮らし。4月から2カ月間買い物以外の外出はゼロです。

 4月20日からオンライン講義が始まりました。「ドイツ語で新しい言葉を学ぶことが楽しい」。大変なのは課題の多さで、午前2時ごろまでかかるときも。なれない家事で寝るのが遅くなり、午前10時に起きることも。

 クラスメートとの交流や試験対策もオンライン。3月末、2年生のオリエンテーション委員の音頭でクラスのSNSグループができました。ビデオ通話で上級生が履修方法を説明したり、学園祭の委員や必修科目のクラスの試験対策委員(シケ対)を決めたり。必修科目のオンライン勉強会では、シケ対の予想問題をみんなで解き、ゲームをして雑談します。「でも、一度も会えていないので仲良くなれていないんです」

 神奈川県内の私立大学のミュージカル学科に入学した志織さん。入学式や全学科合同の新入生歓迎会もありませんでした。昨年の新入生歓迎会の映像が公開され、「生で見たらもっと迫力があるのかな」と残念がります。

 4月に大学がパソコンや通信機器を貸し出し、5月11日からオンライン講義が始まりました。まずは学科の全員が集まり、2コマかけて意気込みなどを自己紹介。ダンスの講義では“画面越し”にストレッチしました。「ピアノの音と先生の動きが少しずれて見えるんです。ダンスを習うのは初めて。違うところがあっても対面でないと的確な指摘を受けられないのでは、と心配です」。6月に定期公演が予定されていますが、声を出す演劇や歌の講義がいつから対面で始まるのか連絡はありません。

教員は

深い学びへ試行錯誤

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(写真)オンラインで舞踊の実習をする堀内さん=5月22日、東京都渋谷区内のスタジオで

 教員も大変です。文部科学省が通知で、オンライン講義後すみやかに、添削指導・質疑応答などによる十分な指導や、「学生の意見の交換の機会」を確保するよう、すすめているからです。

 名城大学准教授の蓑輪明子さんは通信がパンクしないようデータの容量を少なくして、資料を事前に配布。感想やリポートの提出を求めています。「課題が多すぎると聞いたので、今は負担を少なく深く学べるよう試行錯誤しています」

 大学が再開し、オンラインと対面の授業を並行するには、大人数が聞ける通信環境が学内に必要ですが、準備はなし。「基本的には今後もオンライン講義が続く」といいます。

 「私たちも学生のことを知りたい。負担に思うことや困ったことがあれば、遠慮なく話してほしいです」

 大阪芸術大学教授の堀内充さん(舞踊コース)のオンライン実習では…。

 歌や演劇、音楽、舞踊を専門に学ぶ大学。22日は3回目のオンライン実習でした。本来3コマ分、5時間ほどですが、今は2時間で終了。事前に動画とテキストを配信し、自習してから参加するよう呼びかけています。前後のミーティングで学生の思いを聞き、見通しを伝えます。

 「広い教室でバレエを踊り、感性と知性を養う学生の居場所が大学です。そこに入れない悲しみを少しでもやわらげたい」。レッスン中も「誰も見ていないからと怖い顔をしないで。私は見ています」「気持ちを上に向けて踊っていきましょう」と声をかけます。

「すべてが不安」「毎日泣いてます」

学生緊急アンケートの声

 広島文化学園大学教員の伊藤駿さんが行った「新型コロナウイルス流行による大学進学・在学に関する緊急アンケート」の新入生の自由記述から(4月22~30日まで実施。1363人が回答)

 父親は単身赴任中で、母親のみ外出している。家から一歩も出ずに30日以上たった。外も中もつまらなくてカーテンも開けなくなった。最近夜に泣くことが増えた。他の人も頑張ってるだろうから弱音が言えない。

 いっそのこと2021年から新たなスタートを踏み出したい。とにかくスーツを着て入学式をしたいし新歓などもしたい。大学生活、アルバイト、サークル、友達などすべてが不安です。このような意見や不安な気持ちを伝えられる、こうしたアンケートがあることがありがたいです。

 新しい土地で友達作りの機会もなく、1人で生活するのは苦しい。孤独感にさいなまれて嫌になる。オンラインでできることも限られるし、仕方がないけど、ほんとにつらくて毎日泣いてます。できれば、ただ話を聞いてくれるだけのお仕事増やしたらいいんじゃないかなって思います。

 オンライン授業では、多くの学生が一斉にアクセスするため、音声が途切れるトラブルなどで授業が一時中断し、十分な授業を行えていません。また一度も授業を行っていない講義もあります。何らかの代替措置が必要だと思います。

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