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2020年6月4日(木)

主張

米の黒人殺害事件

人種差別許さぬ社会へ連帯を

 米ミネソタ州で起きた白人警察官による黒人男性殺害に世界で抗議の声が上がっています。米国では分断と対立をあおるトランプ大統領に対して、人種差別に反対する行動が全国的に広がっています。治安維持を担う保安官がデモ行進に加わり、出動した警察官も片膝をついて殺害された男性を悼みました。恥ずべき人種差別とその暴力を許さない連帯の運動こそ、米国の未来を代表しています。

人権擁護は国際的な義務

 路上に押さえつけられ、抵抗できない黒人男性の頸部(けいぶ)に乗る警察官の映像は世界に衝撃を与えました。「息ができない」とうめく男性の首を締め付けて殺害したといいます。信じがたい蛮行ですが、米国では警察官による黒人殺害が後を絶ちません。

 「すべての人間は生まれながらにして平等である」。1776年の米国独立宣言が掲げた建国の精神です。奴隷解放宣言から157年、人種差別を禁じた公民権法の制定から56年になります。全米に広がっているのは、いつまでもなくならない人種差別への憤りであり、今度こそ差別をなくさなければならないという、やむにやまれぬ思いです。新型コロナウイルスの感染と、感染による死亡も黒人が白人より高い比率を占め、命にも人種による格差があることが明らかになっています。

 国連人権高等弁務官、アフリカ連合も今回の事件に抗議の声を上げています。人種差別をなくし、人権を擁護、発展させることは国際的に各国が負う義務です。1945年の国連憲章、48年の世界人権宣言、66年の国際人権規約などを通じて第2次世界大戦後、人権保障は単なる各国の内政問題でなく、国際的課題と規定されました。ファシズムと軍国主義による人権蹂躙(じゅうりん)が戦争への道を開いたという歴史の教訓があったからです。

 人種差別撤廃条約もあらゆる形態の人種差別を根絶することを締約国に義務づけています。米国の事件に国際社会が懸念と非難の声をあげたのは当然です。

 市民の抗議の声に包まれたホワイトハウスで1日に演説したトランプ大統領は、人種差別への批判を一言も口にせず、その一方で「暴徒」の鎮圧に連邦軍の動員も辞さないと宣言しました。もちろん商店や街を破壊する暴力は許されません。人種差別反対の運動とは無縁です。だからこそ大統領には、差別根絶のために社会の連帯を強める政治が求められます。それを軍まで動員して武力弾圧する、その威嚇をすることは、大統領自ら差別と分断をあおるだけであり、極めて危険です。

主権者としての権利行使

 「略奪が始まれば銃撃も始まる」とツイッターに投稿したことをはじめ、今回の事件をめぐるトランプ大統領の強権を振りかざす姿勢は人権擁護の歴史の流れに逆らっています。

 殺害された男性の弟は事件現場を訪れ「私の怒りはみんな以上だ」と述べつつ、破壊活動には「そんなことをしても兄は帰ってこない」と反対し、選挙で投票して社会を変えようと訴えました。主権者として権利を行使し人種差別をなくそうと呼びかける被害者家族に連帯し、差別や抑圧のない公正な社会をつくる運動は、米国で、そして世界でいま切実に求められています。


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