2020年6月6日(土)
在宅ワークの課題と留意点は
労働時間の適正管理必要
新型コロナウイルスの感染防止策の一つとして、「在宅ワーク」や「テレワーク」(テレ=離れたところ)に取り組む企業が増えています。電車通勤が減り、子どもの面倒がみれるなど一定の効果がある一方で、「仕事と生活の区別があいまいになる」「会社より長時間労働になる」などの声も少なくありません。在宅ワークの課題や留意点を改めて見てみます。
在宅ワークなどで生じる一番の問題は、労働時間管理です。会社と違い自宅や中継事務所などで上司もいないなかで働くからです。
使用者に義務
在宅ワークを行う場合でも、使用者はすべての労働者の労働時間について適正に把握する義務があります。
労働者から始業時・終業時にメールや電話で連絡させる企業が多く、ネットで勤怠管理をしている場合は特別の対策がいらないケースも。業務内容についても、終業時に報告させるなどの方法を取って確認している企業も少なくありません。
厚生労働省は、在宅ワークの導入について就業規則などに定めるよう指摘。休憩時間の取り方をはじめ、育児や家事などで業務中断を認める場合のルール、長時間労働の防止対策、通信機器や通信・水光熱費の負担などについて、労使で協議して定めておくよう呼びかけています。
在宅ワークでも、通常の労働時間規制(1日8時間、週40時間)が適用されることは、変わりません。残業代や深夜・休日手当も払う義務があります。
労災事故も通常の労働者と同じく労災保険が適用されます。
「みなし」要件
どうしても労働時間の算定ができない場合は、「事業場外みなし労働時間制」(労働基準法38条2)を導入することも可能ですが、注意が必要です。
同制度は、就業規則などで定めた「所定労働時間」など一定時間労働したとみなす制度です。8時間と定めれば、実働は7時間でも10時間でも8時間労働とみなすもので、サービス残業の危険性も抱えています。そのため導入には厳しい要件が課されています。
(1)業務が自宅で行われる(2)パソコンが使用者の指示で常時、通信可能な状態になっていない(3)業務が随時、使用者の具体的な指示に基づいて行われていない―という三つの要件がすべて必要です。
日本労働弁護団は、在宅ワークは常時通信可能な状態に置かれ、会社が業務内容を具体的に指示している場合がほとんどだとして、こうした場合は導入できないと指摘しています。
阪急トラベルサポートの旅行添乗員が訴えた最高裁判決(2014年1月)では、(1)携帯電話を所持し指示を受ける(2)ツアー行程表があり、添乗員の決定範囲は限られる(3)日報報告で行動が確認される―として「事業場外みなし労働時間制」に該当しないとの判決が出されています。