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2020年6月13日(土)

論戦ハイライト

医療・文化・学生・観光 支援の抜本的拡充を

電通疑惑 徹底究明こそ必要

参院予算委 山添・武田議員が質問

 12日の参院予算委員会で、新型コロナウイルス感染症の影響で苦境に立つ、医療、観光、文化、学生に必要な支援を届けるよう迫った日本共産党の山添拓、武田良介両議員。コロナ対策として打たれている政府の支援事業をめぐっても、その委託費が一部の大企業に“食い物”にされていた疑惑がさらに深まりました。


写真

(写真)質問する山添拓議員(右)=12日、参院予算委

医療支援

山添「現状続けば廃業も。直ちに支援を」

首相「いざという時は予備費」

 山添氏は、医療機関への支援をめぐり、全日本病院協会などの調査によれば、4月にコロナ患者受け入れ病院の78%が赤字、受け入れていない病院でも62%が赤字だと指摘。2次補正にはコロナ患者向けの病床確保への補助は盛り込まれたものの、受診抑制によるものなど、その他の減収への支援がないと追及しました。

 山添 今の状態が続くなら廃業を検討せざるを得ないとの声が出ている。

 首相 2次補正で(医療支援に)2兆円超を上積みした。いざという時は予備費を活用する。

 山添 (予備費でなく)いま必要なところに支援すべきだ。

 山添氏は、医療機関の支出の半分を占める人件費への補助も要請。夏のボーナス半減や2割の賃下げなど深刻な影響が出ていると迫りました。

 加藤勝信厚生労働相は応じず、危険手当や慰労金、融資や診療報酬の概算払いの活用を訴えるだけでした。

 山添氏は「医療機関の経営はもともと厳しい。日本病院会などの調査では全体の45・4%が赤字で、東京では半数が赤字だ」と強調。診療報酬の削減が要因だと追及しました。

 加藤厚労相は要因を認めず、今年度は「プラス改定した」と強弁。山添氏は「2000年代を通じて実質改定率はマイナス10・5%、給付費で3・6兆円も減らされた計算だ」と批判しました。

 山添 そこにコロナが直撃した。融資でしのげというが、医療機関によっては月に億単位の赤字だ。どうやって返すのか。

 厚労相 2次補正の支援で経営見通しがもてる環境をつくる。

 山添氏は、2次補正の支援内容では到底足りないと強調。安倍首相は「コロナ対応は予見できないところもある。いざという時は予備費を活用する」と述べるばかりでした。

 山添氏は、「医療機関の経営難は、予見できないものでなく現実だ。そういうもとで第2波への備えなどできない。直ちに支援を強化すべきだ」と重ねて求めました。

文化支援

山添「小規模施設に支援の併用認めよ」

文科相「重複」認めず

経産相「文科省とすり合わせ」

 文化芸術支援をめぐっては山添氏が、ミニシアターやライブハウスなど小規模施設について、文化庁と経済産業省の支援制度を併用できるようにすべきだと迫りました。

 萩生田文科相は「重複が起こらないようにする」と併用に否定的な考えを示しました。

 山添氏は、経産省の制度は感染防止対策の実費への支援であり、「文化庁とは必ずしも重ならない。両方の支援を受けても不都合はないはずだ」と指摘。梶山弘志経産相は「文科省とすり合わせながら考える」と答えました。

 山添氏は、国の文化芸術政策そのものについてもただしました。

 山添 ミニシアターや小劇場、ライブハウスはどういう場だと認識しているか。

 首相 多様な創造発信を支える場として、文化芸術をより豊かなものに育てるために重要な役割を果たしている。

 山添氏は、「文化芸術への国の支援はもともと乏しく、国家予算額に占める文化予算の割合は、フランスの9分の1、韓国の10分の1だ」と指摘。「最前線で活躍する歌手や俳優、映画監督の多くがミニシアター、ライブハウス、小劇場の出身だ。自らの原点が失われるのを黙って見ていられないと声を上げている」と述べ、「コロナ禍でどれだけの人が映画や音楽、演劇に救われたか。日常の苦痛を忘れさせてくれ、人生を豊かにしてくれるのが文化・芸術だ。日常的な支援のあり方を含め、抜本的に転換するべきだ」と主張しました。

持続化給付金

山添「電通とずぶずぶの関係。さかのぼって調査を」

経産相「これまでのことは検査が終わっている」

 コロナ禍で苦しむ中小事業者などに支給する「持続化給付金」の不透明な業務委託問題。山添氏は、事業の再委託を受けた広告大手・電通と経済産業省、政府・自民党との癒着ぶりを告発し「国民の税金を一部の大企業が分け合うなど許されない。国会での徹底解明を」と迫りました。

 持続化給付金事業は、「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」(サ推協)が経産省から769億円で受託。749億円で業務の大半を電通に丸投げしています。

 山添氏は発注側の前田泰宏中小企業庁長官と、サ推協の平川健司業務執行理事(元電通社員)との癒着関係に迫りました。

 平川氏と知り合ったのは2015年か16年ごろだったと述べた前田長官に対し、山添氏は、09年の家電エコポイント事業当時から知り合いだったのではと告発。当時、前田長官は同事業を担当する商務情報政策局の情報経済課長、平川氏は電通社員で政府エコポイント事業のプロジェクトマネージャーでした。

 前田氏は「エコポイント担当ではなかった」「当時は面識がない」などと答弁。一方、電通が同事業の申請サイト管理システムを外注したアメリカのセールスフォース・ドットコムが09年に都内で開いたイベントで、自身が講演したことは認めました。

 山添氏は、講演で前田氏がエコポイントは同社のサービスだと紹介していたと述べ、「当時面識がないというのは信じがたい」と指摘。その後、16年にサ推協が設立され、おもてなし規格認証事業など両者が数々の事業で一緒に仕事をしてきたと追及しました。

 山添 電通と経産省はずぶずぶの関係にあり、前田長官が責任者の部局から、平川氏が役員を務めるサ推協へ1500億円以上のお金が流れている。癒着と言われても仕方ない。さかのぼって調査を行うべきではないか。

 梶山弘志経産相 これまでのことは検査が終わっている。まずは持続化給付金の中間検査をする。

 山添 さかのぼってやるべきだ。

 山添氏はさらに、「背景には政府、自民党と電通との癒着もうかがえる」と指摘。安倍首相が支部長を務める自民党山口県第4選挙区支部には、電通から11年、13年、14年に合計30万円が献金されていると述べ、「電通が国会議員の支部に献金するのはあまり例がないと聞く。なぜ献金を受けているのか」とただしました。

 安倍晋三首相は「私の政治活動に対し支援していただいているんだろう」などと述べるだけ。

 山添氏は、電通は自民党の政治資金団体・国民政治協会にも毎年献金し、12~18年の7年間で3600万円に上ると指摘。政府が電通に支払った政府広報費をただしたのに対し、田中愛智朗広報室長は、17~19年度の3年間で約135億円に上ると答弁しました。

 山添氏は「コロナ禍で苦しむ中小・個人事業者の命綱ともいえる給付事業の予算を、一部の大企業が分け合うなど許されない。徹底解明を」と求めました。

勤務延長の閣議決定撤回を

黒川氏以外にあの人も

 山添氏は、黒川弘務前東京高検検事長の勤務延長問題を追及。2016年9月に黒川氏が法務事務次官に就任した後、共謀罪法強行、カジノ合法化、外国人労働者受け入れ拡大法の強行、森友文書改ざんでの佐川宣寿財務省元理財局長の不起訴処分など「官邸の守護神」としての役割を果たしてきたと指摘しました。

 また山添氏は、黒川氏だけでなく安倍政権が勤務延長を乱用してきたと批判。今回の検察庁法の違法な解釈変更を認めた近藤正春現内閣法制局長官、14年の集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更を認めた横畠裕介前内閣法制局長官、15年の安保法制強行当時の河野克俊自衛隊統合幕僚長など、政権にとって都合のよい人物の勤務延長をくり返している事実を示しました。

 山添氏は、三権分立を侵す勤務延長の閣議決定と検察庁法改定案の撤回を強く求めました。

医療支援不十分なまま

10兆円予備費 財政民主主義侵す

 山添氏は、医療機関に対する支援が全く不足していることを具体的に追及したうえで、政府は「10兆円の予備費のうち2兆円は医療のために必要だとしているが、2次補正の医療費分では足りないと認識しているのか」と首相にただしました。

 安倍首相は、コロナ対策では予見できないものもあるとし「いざというとき予備費を活用する」などと答え、巨額予備費の計上を正当化しました。

 しかし「予見」ではなく、現に必要とされている医療や雇用、営業への支援を十分行わない政府に、10兆円もの巨額の「予備費」を白紙委任することなどできません。

 そもそも財政支出の額と項目を国会の審議、議決で決めていくのが財政民主主義であり、憲法の原則です。

 10兆円もの巨額支出を政府に白紙委任することは明らかな憲法違反です。

学生支援

武田「申請要件は機械的な選別基準ではない」

首相「相当柔軟に対応する」

 武田氏は、困窮する学生に最大20万円を給付する支援制度をめぐり、申請時に提出する「誓約書」に、「家庭から多額の仕送りを受けていない」「バイト収入50%以上減」などの要件が記されていると指摘。「学生を諦めさせることがあってはならない」と何度も述べ、各要件について確認しました。

 萩生田光一文部科学相は「自宅生でも、バイト収入で学校費を賄っているなどの場合は対象」「『50%以上減』はマスト(絶対)ではない。明らかに収入が減っていると学校で認め、申請を」と述べました。

 新入生についても、時給や1カ月当たりの収入の見込み額で申請できると答弁。申請期限に間に合わなくても、「2次推薦をやる。ぜひ申し込んでほしい」と呼びかけました。

 武田氏は「母子家庭でも下宿生でもなく、バイト収入の実績もない僕のような者には利用は難しいと大学に言われた」など、「一律学費半減を求めるアクション」に寄せられた声を紹介し、迫りました。

 武田 要件は機械的な選別基準ではないということだ。制度活用を促すメッセージを発してほしい。

 首相 相当柔軟に対応する。どんどん活用してほしい。

観光業支援

武田「事業者に直接届く支援策打て」

 「ホテル・旅館をはじめ、地域の大切な観光業をつぶさないための支援を今、することが大事だ」―。武田氏は全国の宿泊事業者の約9割が従業員30人未満の中小事業者だと指摘。当面の資金を借り入れた旅館の経営者からは「返済額が増えた。しかし、お客さんがすぐに戻ってくる見込みもない。良くなる要素が乏しいなかで、このままでは倒産してしまう」との悲鳴が上がっていると紹介しました。

 武田 こういう事業者をどう支援するのか。

 赤羽一嘉国土交通相 (政府の消費喚起策)「Go Toトラベル事業」の一番の目的は、観光客のみなさんの流れを取り戻すことだ。すみやかに発動できるよう全力で取り組んでいる。

 武田 需要喚起策も大切だが、今は地域の大切な観光業をつぶさない支援をすることが大事だ。

 武田氏は、地方創生臨時交付金の活用などで、事業者に直接届く支援策を打つよう求めました。

GoToキャンペーン

武田「なぜ公募前、電通にヒアリングしたのか」

経産相「過去に受託実績がある」

 コロナ禍で落ち込んだ観光・飲食産業の消費を喚起する「Go Toキャンペーン事業」も、持続化給付金と同じように電通に丸投げしようとしていたのでは―。武田氏は、同事業をめぐる疑惑を追及しました。

 「Go Toキャンペーン事業」は、第1次補正予算で約1・7兆円を計上。事務委託費の上限を事業費の2割に上る3095億円も見積もるなど不透明さが問題になり、政府は委託先の公募を中止しました。

 武田氏は、同事業も持続化給付金と同じ構図で「電通に窓口を委託する線で話が流れていたのでは」と追及。「公募前にヒアリングを行った事業者に電通は含まれているか」とただしたのに対し、梶山経産相は「電通を含む約50社とご相談した」「当方から申し込む形で実施した」と答えました。

 武田 なぜ電通にヒアリングをしたのか。

 経産相 電通は過去に需要を喚起する事業をはじめ受託実績があることを踏まえてヒアリングを行った。

 武田 電通とのヒアリングは何回行ったのか。

 経産相 10回程度の面談を実施した。

 武田 かなりのヒアリングをやっている。当初から電通に委託を念頭においていたのではないか。

 また、公募を中止した理由について、梶山経産相は「分野別に事務局を設置すべきとの指摘があったため」などと説明。武田氏が、分野別に分ければ「事務委託費を減らせるのか」と質問したのに対し、梶山経産相は「結果を見なければ何とも言えない」と答えました。

 武田氏は「委託費を減らすことが目的ではないということだ。3095億円もの委託費を電通に流しては国民の批判は避けられないから仕切り直したのでは」と述べ、「国民の疑念は晴れない」と疑惑の究明を迫りました。


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