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2020年6月13日(土)

国際刑事裁に経済制裁も

トランプ氏、大統領令に署名

米兵の犯罪捜査を妨害

 トランプ米大統領は11日、アフガニスタンでの米兵の戦争犯罪捜査などに関与する国際刑事裁判所(ICC)当局者に対して経済制裁を可能にする大統領令に署名しました。先月の世界保健機関(WHO)からの離脱に続き、自国の利益を追求して国際協力を拒む「米国第一主義」を改めて示しました。戦争犯罪者を裁く国際的な努力にも背を向ける姿勢を鮮明にした形です。


 大統領令では、米国の同意なしにICCによる米国民の捜査や訴追に直接関与したすべての個人が制裁の対象になります。

 ホワイトハウスの声明は「ICCの行動は米国民の利益への攻撃であり、米国の主権を侵害する恐れがある」などと指摘。「米国と、イスラエルを含む同盟国に対する政治的動機に基づいた捜査を追求している」としました。米国はICCに加盟していません。

 記者会見したポンペオ国務長官はICCについて「いかさま裁判所」と表現。バー司法長官は「財政上の腐敗や不正行為がある」「ロシアに操作されている」などと主張しましたが、具体的な事例や根拠は語りませんでした。会見は記者からの質問を受け付けずに終了しました。

 ICCは今年3月、アフガンで戦争犯罪が行われたかどうかについて「真実追究」捜査を実施すると決定。同国の反政府勢力タリバンやアフガン治安軍とともに、米軍と米中央情報局(CIA)が対象とされています。ポンペオ国務長官は「裁判所を名乗るこの裏切り者から米国民を守る」などと反発していました。

 アフガンでの戦争犯罪をめぐっては、ICCの主任検察官が2016年に公表した予備調査活動に関する報告で、米軍とCIAが戦争犯罪に該当する拷問を行ったと信じるに足る「十分な根拠がある」と指摘していました。(島田峰隆)

「法の支配への侮蔑」

国内外から批判相次ぐ

 トランプ米大統領が国際刑事裁判所(ICC)当局者に対して経済制裁を可能にする大統領令に署名したことに対し、国内外から厳しい批判が出ています。

 ICCは声明で「ICCへの攻撃は残虐犯罪の犠牲者の利益に対する攻撃でもある。こうした犠牲者の多くにとってICCは正義への最後の望みとなっている」と強調しました。

 欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)は「深刻な懸念」を表明。「ICCは国際社会に正義をもたらし、最も深刻な国際犯罪に対処するうえで重要な役割を果たしている。すべての国から尊重され、支援を受けるべきだ」と述べました。

 裁判所があるオランダのブロック外相は、同裁判所は「刑事免責とのたたかいで不可欠だ」と強調しました。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは「国際的な法の支配に対する侮蔑であり、露骨な妨害の試みだ」と指摘。国際正義を支持する国々は「妨害に公然と反対するべきだ」と呼び掛けました。

 米人権団体、全米市民自由連合(ACLU)は「人権侵害の犠牲者に唯一残された正義への道をふさぐもの」だと批判。「人権とそれを支えようと活動する人々への侮辱だ」と指摘しました。(島田峰隆)

 国際刑事裁判所(ICC) 大量虐殺、人道に反する罪、戦争犯罪を対象に個人を裁くことを目的に設置された独立した常設裁判所。2002年に設立条約が発効。国際司法裁判所(ICJ)とは別の組織で国連からも独立。裁判所はオランダのハーグ。


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