2020年7月17日(金)
東京女子医大 一時金ゼロ回答・看護師400人退職希望
「従事者守れ」「国は支援を」
労組は「ゼロ」の再検討求める
新型コロナウイルスへの対応で、多くの医療機関が経営危機に直面しています。医療労働者の生活を守り、コロナから国民を守る医療体制を確保する国の責任が問われています。(田代正則)
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東京女子医科大学(本部・東京都新宿区)では、30億円の赤字だとして夏季一時金ゼロを労働組合に回答。看護師の退職希望が400人を超えると推定されます。主要3施設の看護師2200人の2割近くにあたります。日本共産党の小池晃書記局長が2日の参院厚労委員会で取り上げ、衝撃を与えました。
看護師のひとりは、「毎年、採用募集の人数を決めるため退職希望者の調査が行われていますが、今年は例年の2倍以上でるのではと危機感を募らせています」と話します。新卒採用サイトで来年度の看護職員募集は330人になっています。
同大は5月からコロナ患者用に、普通病床とICU(集中治療室)を確保。コロナ患者がいなくても常にベッドを空けており、外来患者も大幅に減少しています。
組合資料では、同大看護師の初任給(3年課程卒)は基本給21万1300円で、東京医労連平均より8000円低くなっています。昨年の夏季一時金の平均支給額は約55万円で、重要な生計費の一部になっています。
当局側は「このままでは冬の一時金も出せない」と発言。コロナに対応しながら、年間100万円以上カットされかねない事態です。
組合側は、「コロナの影響による大幅収入減はどこの大学病院でも同じだ。他の病院は定期昇給実施や一時金支給を行っている」と指摘。一時金ゼロの再検討を求めています。
医療・生活守る緊急措置を
東京女子医大の団体交渉で、当局側弁護士が「仮に400人辞めても現状では何とかまわる。足りなければ、看護師を補充すればいい」と発言し、労働者の怒りを買っています。
組合に寄せられた意見で、30代の医師は「職員の敵意をあおるような発言だ。労使でこの苦境を乗り越えなければいけないのに」。30代の看護師は「ただでさえ足りていないのに、辞めてしまったら経験者もいなくなり、患者の安全も守れない」。
20代の看護師は「昇給・ボーナスなしは納得できません。今まで一緒に苦難を乗り越えてきた仲間を残して辞めにくい」と述べました。
本紙の取材に同大広報は「回答を控える」としています。
東京医労連の青山光書記長は「労働者は一時金をあてに生計をたてている。ゼロにされては生活に直結する」と指摘。「医療機関の収入は軒並み落ち込んでおり、一時金削減は日本医労連の組合の3割で起こっています。経営者には医療労働者を守る姿勢をとってほしいが、国が経営支援をしなければ、医療基盤を維持できない」と訴えます。
日本共産党の小池晃書記局長は2日の参院厚労委員会で、女子医大夏季一時金ゼロ回答を事例に「過去の診療実績による概算払いを認めるなど、資金ショート(不足)やボーナスカットを回避する緊急措置が必要だ」と国の責任を追及しました。
加藤勝信厚労相は「経営状況が厳しくなっているという認識は共有」といいながら、「融資が行われるようにする」というだけ。小池氏は、福祉医療機構による融資件数も6月末現在で6600件しかなく「焼け石に水だ」と批判しました。
女子医大職員のなかでも「国会質問で小池晃議員が『女子医大のボーナスゼロ、看護師400人退職予測』と発言してました。世の中に何か響くといいですね」(40代看護師)と声があがりました。
日本医労連は政府に対し「1日20万件PCR検査体制」「自粛に応じた全面補償」「医療体制抜本強化」を柱に第3次補正予算編成を求める森田進書記長の談話を発表。「医療経営と従事者を守り、万全の備えに総力をあげる」ことを求めています。